日本においては,思春期の子どもの発達に関して心理的自立を重視する傾向があるが,本研究の情緒的自律性に関する知見は,親子の良好な関係性を基盤にしていない心理的自立は思春期の健康な心理社会的発達においてマイナスの側面があることを示すことができた。このことは思春期年代の子どもの理解をさらに深めることにつながり,特に家庭と学校における思春期教育において有益な知見になる。また,相互信頼感の概念は従来用いられてきた信頼にさらに相互性の観点を付け加えたものであり,新しい概念である。この概念に関してはまだ僅かな研究知見しか出ていないため学術的意義があると考えられる。
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