研究課題
超低出生体重(ELBW)児の学齢期における発達障害様の特性を調べるために、注意や読み能力について客観的な検査を用いて計測した。注意機能の計測として、Test of Everyday Attention for Childrenから5つの項目とコンピュータ制御された持続遂行課題のもぐらーず第6版を使用した。つまり、合計6課題を行い、選択的注意・注意の維持・注意の制御という注意のコンポーネント別の能力について調べた。その結果、選択的注意と注意の維持の4課題では、ELBW児の成績はNBW児の成績よりも低かった。しかし、注意の制御に関してはELBW児とNBW児の間で成績に差があるとはいえなかった。読みの計測として、「単語速読検査」(「読み検査」の下位項目)と「文の理解」(K-ABCⅡの下位項目)を使用した。その結果、読みの正確さに関して、ELBW児の成績はNBW児の成績よりも低かった。(単語読みの成績:t(70.10)=1.90, p=0.04, d=0.5、無意味語読みの成績: t(60.17)=3.31, p=0.002, d=0.7)。しかし、文章理解に関してはELBW児とNBW児の間で成績に差があるとはいえなかった。さらに、読んでいる時の視線行動をアイトラッカーにより計測した。その結果、単語を音読しているときの視線行動の特徴から、ELBW児の読みの問題には注意機能の問題が関係していることが示唆された。その他には、保護者に対しては半構造化面接並びに質問紙調査(SCQ、PARS、ADHD-RS4、Conners3)、担任教師に対しては、質問紙調査(LDI-R等)を実施し、自閉スペクトラム症や注意欠陥多動症、限局性学習症などの発達障害のスクリーニング調査を実施した。
2: おおむね順調に進展している
2015年度は、協力病院の検診体制が変わることになり、その影響で研究協力者の募集が一時的に停止されたため当初予定していたほどにはサンプルは集まらなかったが、これまで蓄積してきたデータも合わせて行った予備的分析により、脳室内出血や慢性肺疾患などの周産期合併症がELBW児の発達障害様の症状の発現に関わる可能性に加えて、新生児期からのビタミンEの長期投与が注意機能や読み能力の改善につながる可能性が示され、新たな成果も見られた。
超低出生体重児の発達障害様症状の特異性と発症メカニズムの解明に向けて、更にサンプルサイズを増やしアイトラッカー等最新の指標を取り入れた多面的定量的評価を進めると共に、2015年度の分析で明らかになった注意機能に焦点を当てた分析を進める。また、脳室内出血、慢性肺疾患、未熟児網膜症などの周産期合併症の影響や、研究協力児に含まれる一卵性双胎と二卵性双胎の兄弟間の比較や生殖補助医療の影響を含めて分析し、超低出生体重児の発達障害様症状の発症メカニズムに迫る。さらにビタミンEの長期投与など症状の発現に抑制的に働く治療的因子の存在についても分析を進める。
協力病院の検診体制の変更があり、当初予定していたほどに研究協力者の募集ができなかった。
平成28年度も平成27年度に引き続き研究協力者を募って超低出生体重児の発達障害様の症状について多面的評価を実施するので調査旅費や研究補助者の謝金、研究発表の旅費等に使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
言語聴覚研究
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Acta Paediatrica
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