5ヵ年にわたる研究の最終年度となる2019年度の成果は以下のとおりである。
1)前年度に作成したワーク・シートをキャリア教育場面において試行したところ,多くの参加者において自己効力に変化がみられた。自己効力の上昇がみられた者が多かった一方で,キャリア教育による介入の前後で変化のない者や,自己効力が下がった者もみられた。これら数値による変化と自由記述内容等を分析して,ツールの効果と改善点について整理した。成果については来年度以降の学会等にて発表する予定である。今回の結果を踏まえるならば,自己効力の値を上昇させるのではなく,「現実の能力をわずかに上回る楽観的な認知」へと近づけていくための介入方法について検討をしていくことが大切といえる。 2)ライフキャリアを視点においた将来設計について,とくに時間の使い方に着目して,簡易なワーク・シートを作成して試行を行った。自身の結果と他者の結果を比較したり,その背景にある価値観や態度について考えるディスカッションを行うなど,多様な使用方法と実施にあたっての問題点について検討した。今後は,ワーク・シートを作成して自身の将来を可視化するだけでなく,異なる視点や態度をもつ者との相互作用による気付きを促進させる経験機会となるよう工夫をしていく必要がある。
以上,最終年度はワーク・シートの試行を行い,実施にあたっての課題について整理した。キャリア教育場面において導入するために,今後はさらにインストラクションや補助資料,事例集などを充実させていく予定である。
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