医療機関を受診する発達障害(傾向)を持つ子どものよりよい支援のために,医療と教育の連携構築の架け橋になる情報共有シートの開発を目的として以下を実施した。 ①質問紙1(「発達障害における小学校教師の医療に関する意識」)の再分析:自由記述を分析した結果,教師は受診後に医学的見地から指導方法への直接的助言を医師に求めていることが明らかになった。②情報共有シート(学校用・医療用)の最終版の完成と実施:学校用シートは,教師の意見を参考に最終版を実施した。医療用シートは,①の結果と小中学校教師4名,小学校長3名からのニーズを反映した項目を追加し,3モデル校・2総合医療機関で実施された。③実施手引書の作成(医療用・学校用)。手順に関する説明書を作成し,依頼時に使用した。④メインモデル校における事例検討:シートの使用プロセスの確認及び事例検討を3年間メインモデル校で行った。その結果,教師からの意見と使用状況を把握できた。⑤質問紙2(「情報共有シート使用前後のアンケート」)の実施:シートを使用した7名の教師(21事例)に対し,質問紙2を依頼した。その結果,最も平均値が高かったのが,「子ども像がより明確になった」であった。本シートの使用により子どもの多角的理解が促進されながら教育と医療の連携が行われたと考えられた。⑥情報共有シートの最終検討(研究協力者,教育委員会,校長・教師):発達障害傾向のある子どもに対する学校現場の対応と医療連携の難しさは大きな課題であり,今後使用範囲の拡大を希望する意見が出された。実施校の教師からは,「校内支援会議でも使用し役立っている」「医師に尋ねたい項目が多い」「医療との連携がしやすくなった」との意見が出された。 以上より,最終年度の情報共有シートの実施・検討を通して,本シートの使用は多角的視点による子どもの共通理解及び医療と教育との連携構築に有効であることが示された。
|