研究課題
本研究の目的は,青年期におけるアイデンティティの形成プロセスを,他者との相互作用のあり方(関係性の観点)から解明することであった。具体的には,青年にとって身近で重要な他者である仲間との討論を通して,どのようにアイデンティティが構築されていくのかをリアルタイムで記述し,その機序を明らかにすること(研究1),ならびに青年のアイデンティティ形成において関係性が重要であることが,文化をこえて認められるかどうかを明らかにすることであった(研究2)。H29年度には,研究2を実施した。具体的には,青年にとって最も重要な他者である両親との関係性に焦点を当て,自己観について日本とは異なる文化圏であるヨーロッパ(リトアニア及びイタリア)の青年と日本人青年を対象に,関係性とアイデンティティとの関連を検討した。その結果,(1)親との関係性が親密で暖かいほど,アイデンティティの統合が高く混乱が低い,(2)親との関係性において心理的距離が遠いほど,アイデンティティの統合が低く混乱が高い,(3)この傾向は日本よりヨーロッパの青年でより顕著であることが明らかとなった(本研究の成果の一部は,Sugimura et al., 2018に掲載された)。上記最終年度の成果も含めH27年度からH29年度の期間全体としては,(1)アイデンティティは他者(本研究では仲間)との相互作用通じてリアルタイムで形成され,その際にはいくつかの重要な対話のパターンの継起(例えば,「対話の膠着」から「時間的展望の語り」へ)が見られること(研究1),(2)アイデンティティの形成において他者(本研究では親)との関係性が重要性であることは文化をこえて共通である一方で,その機能は文化によって異なること(研究2)が示唆された。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Youth and Adolescence
巻: 47 ページ: 749~759
10.1007/s10964-018-0819-4