研究課題/領域番号 |
15K04075
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 知靖 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30251614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育測定・評価 / 心理測定 / 項目反応理論 / 情動認知 / 表情認知 |
研究実績の概要 |
1)集団式表情認知検査が小中学校での対人関係能力育成プログラムの効果測定に有効であるかを確認するため,対人関係能力育成プログラム実施校において表情認知検査を実施した。調査対象者は,小学生3年生から6年生まで計234名,中学生1年生から3年生まで計218名であった。また,検査開発初期段階で収集した対人関係能力育成プログラム未実施校の小学生857名,中学生431名のデータを利用し,対人関係能力育成プログラム実施校と未実施校での各生徒の表情認知能力値を項目反応理論を利用して算出した。実践の有無×学校を要因とした2要因分散分析を行った結果,実践の有無と,学校種別の主効果が有意であった。しかしながら,実践の有無に関しては実践校がそうでない学校より能力値が低いという結果が見られた。表情認知能力は社会的能力の一部と考えられるが,表情認知に敏感であることが必ずしも社会的に適応的だとはいえず,むしろ中庸である方がよいとも考えられ,今後教師による児童の社会的適応度評定などの指標との関連性を検討する必要がある。 2)表情の認知が特定の部分に基づくという部分処理仮説が動画像でも有効であるかを実験によって検討した。実験参加者は大学生28名であった。男女2名の表情画像をもとに強度の弱い表情から強い表情へと変化する動画像をモーフィングにより作成した。刺激の呈示条件は口マスク・目マスク・口のみ・目のみ・全体の5条件であった。参加者は刺激画像の人物の表情を基本表情の中から回答した。実験の結果,怒りの表情においては口を呈示しない条件で正答率がその他の条件と比べて低下し,悲しみの表情においては怒りと同じ結果に加え,目をマスクした条件が口のみを呈示した条件と比べ正答率が低かった。この結果は静止画に基づく仮説とは異なり,静止画像と動画像では表情認知の手掛かりとなる部分が異なる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育現場でのデータ収集を優先させたため,一部計画を前倒しする形で研究を進めた。また,微表情を利用した表情認知検査の開発可能性を早期に確認するため,動画を利用した表情認知に関して基礎的な研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
大学生のデータを充実させ,これまでに蓄積した表情認知検査データを利用して集団式表情認知検査の標準化を進める。また,場面設定を利用した情動認知に関する検査の開発についても項目作成の準備に取りかかる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究内容を考慮し,研究者との意見交換や情報収集のために参加する大会を当初予定していたものと変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究者との意見交換や情報収集のための旅費として利用し,研究改善を図る予定である。
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