本研究の主な内容は、1.保育士課程の学生の保育実習の前後における乳児の表情を認知しているときの脳機能の変化に関する縦断研究、2.保育士と非保育士の乳児の表情を認知しているときの脳機能の比較に関する横断研究、の2つであった。1については平成27年度に実施し、2については平成28年度に実施した。研究1では、大学生50名を対象とし、保育士課程の学生25名を実験群、それ以外の学生をコントロール群として、実験群の実習前と後の2回、実験群とコントロール群を対象として実験を行った。研究2は保育所に勤務する保育士30名を実験群とし、保育士以外の成人女性30名をコントロール群として実験を行った。いずれの研究においてもfMRIによる課題時の脳反応の撮像と、性格要因を確認するためパーソナリティ・テストの実施を行った。撮像と心理検査は順調に終えることができた。 二つの研究から、1.保育士課程と非保育士課程の学生間における乳児の表情認知時の脳機能の違いと、保育士課程の学生の実習後の脳機能の変化、2.保育士と非保育士の成人女性における乳児の表情認知時の脳機能の違いを確認することができた。 平成28年度は研究1の研究成果の、また、29年度は研究2で得られた研究成果の発表を行った。特に最終年度である平成29年度は、脳科学的データと心理学的データの解析のまとめとその成果報告に取り組み、国際学会での発表と英語論文の投稿を行った。国際学会であるヨーロッパ心理学会では、発表したポスターが700件以上のポスター発表の中からベストスリーに選ばれた。また、英文による論文は学術誌 Neuroscience Research に採択され、掲載された。
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