研究課題
イヌの社会的認知能力の高さは、ヒトが自分と意思疎通がしやすいイヌを長年にわたって育種繁殖してきたためと考えられている。そのため、遺伝的特性も含めた認知能力の検討は、人にとっての意思疎通の要素を検討する上でも重要だと考える。本研究ではイヌのパーソナリティ尺度の開発、妥当性の検討、遺伝的傾向との関連について検討した。また、動物介在教育、療法場面におけるイヌと人の相互作用の分析も実施した。2015年度はイヌの認知特性に関する行動実験およびアンケート調査を実施し、パーソナリティ尺度の試作版を作成。視覚認知能力の高さがイヌの社会的認知能力と関連している可能性が示唆された。2016年度は視覚認知能力を中心とした行動特性とイヌの遺伝的特性の検討を開始。家庭犬、聴導犬候補犬、アジリティー参加犬など、多様な活動をしているイヌの解析をした。また、動物介在療法場面での対象者に関する調査、動物介在活動場面での子どもの反応の解析を開始した。2017年度は1000人を対象としたweb調査をもとに、4因子(穏やかさ、イヌとの社交性、新奇環境での平静さ、訓練への反応性)19項目から構成されたパーソナリティ尺度(JDPS)を開発した。JDPSを用い、100組の飼い主とトレーナーのペアを対象とした調査、イヌ30頭を対象とした行動実験、500名の飼い主を対象にデモグラフィック特性についてweb調査を実施した。その結果、因子の妥当性が高いことが示唆された。また、遺伝的特徴としては、人の知能との関連が指摘されているが、イヌでは検討されていないFNBP1Lの多型について家庭犬全般(n=59)を対象に解析を行なった。その結果、サンプル数は少ないが、しつけのしやすさや、他人に体をさわられても落ち着いているなどの行動特性とFNBP1L多型との関連性が示唆された。
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