本研究は、養子縁組によって育て親のもとに迎えられた子どもが、自己、育て親、産みの親、家族関係などに関する理解を深めてアイデンティティを形成していくために有意義な縁組支援のあり方を「子どもの側」から検討し、子どもが真に必要とする発達支援モデルの構築につながる示唆獲得を目指すものである。具体的には、日本で20年以上にわたって特別養子縁組を支援してきた認定NPO法人環の会の全面的協力のもと、(1)テリング(育て親が子どもを迎えた直後から、産みの親の存在や子どもの出自に関わることがらを日常の中で子どもの発達に応じて伝え続けること)の有効性、(2)特別養子縁組成立後も育て親家族が産みの親側との交流を継続することの有効性、を検証することを目的とする。 最終年度である2018年度も、前年度までに引き続き、育て親のもとで成人した子どもに対するインタビューを主軸とした調査を行った。また、研究期間全体を通じて蓄積してきたインタビュー・データの分析を進めた。 主な結果は、以下のとおりである。(1)早期からの日常的なテリングは、子どもが産みの親の存在や迎えられた事実を受け入れるために有効である。(2)子どもたちは、育て親がテリングすること自体は当然であると考えている。(3)子どもの産みの親についてのイメージや生い立ちのとらえ方には、育て親との関係性や現在の生活についての評価、子ども自身の心理社会的発達に伴う視野の広がりなどが影響している。(4)育て親の肯定的・受容的・共感的な養育態度が、迎えられたことや産みの親についての子どもの理解深化に寄与している。(5)産みの親との交流についての評価は子どもにより差異が見られた。今後、得られた結果を総合的に考察し、養子縁組支援に携わる人たちとの検討を経て、具体的な支援モデルの構築につなげていく。
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