研究課題/領域番号 |
15K04093
|
研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
山形 恭子 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 客員教授 (20085963)
|
研究分担者 |
古池 若葉 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (40307690)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 数読字 / 数書字 / 数概念 / 基数 / 計数 / 年少幼児 / 年長幼児 / 発達過程 |
研究実績の概要 |
研究代表者山形は4歳以下の年少幼児を対象に、彼らの家庭における数・数表記の習得過程を、約2年間にわたる縦断研究から母親のエピソード報告に基づいて検討した。その結果、先ず養育者と年少幼児が参加する数活動や養育者の教示が見られ、次いで「環境中の数の認識」が出現し、さらに数の「読み」を経て「書き」へと発達する道筋が見出された。特に発達初期には養育者と年少幼児の対人的相互交渉よる数活動が見られ、このような共同活動が数・数表記の理解を促進する重要な役割を果たしていることが明らかになった。 また、本年度の研究では数・数表記の発達に加えて文字表記の発達についても検討し、この両者のどちらが発達的に先行して出現するのかについても分析した。その結果、個人差が見られ、数表記が先行する場合、文字表記が先行する場合、両者がほぼ同時に出現する場合が認められた。今後は対象児数を増やして本結果を再検討する必要性が示唆された。 研究分担者古池は4歳以上の年長幼児を対象に面接調査をおこない、数字の「読み」と「書き」ならびに「指の数」・「打数数え」・「加算課題」・「数概念(4つの積木・丸数え・数選び)」の数関連課題を用いてこれらの発達的関連性を検討した。回帰分析の結果から数読字数は4歳児で「数選び」と「4つの積木」に、5歳児では「指の数」に影響されることが見出された。また、数書字数に関しては4歳児で「打数数え」課題の影響が見出された。この結果は一対一対応ならびに基数性の理解が数表記・数発達に関与することを明らかにしている。数の読みと書きならびに数関連課題との関連性に関しては課題の性質を精査して吟味し、その発達的関連性を今後詳しく検討する必要性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は年少幼児と年長幼児を対象に数の「読み書き」の発達過程と数関連課題との関連性を詳細に検討したが、その結果、数表記の発達過程を明らかにするとともに数関連課題との関連性を究明することができた。以上の点からおおむね順調に研究が進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題としては調査対象児の人数を増やすこと、ならびに、数の「読み書き」に関連する数関連課題を精査して吟味し、これらの数課題の性質とその発達的関連性を明らかにして一対一対応と基数理解の成立に関わる研究をおこなうことを予定している。 また、本研究では年少幼児において養育者と対象児との数活動における相互交渉と環境中の数認識の影響が明らかにされたが、数表記発達と数発達に影響すると推定される諸要因に関しても検討が必要であり、今後の検討課題として取り組むことを考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に出席予定のために多額の旅費を設けていたが、本年度は国内で国際学会が開催されたためにその費用が少なくて済んだことによる。 また、データの収集・分析に人件費ならびに謝金を使用する予定であったが、本年度はこれまで収集したデータの分析を中心におこなったために費用が残った。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度にはいくつかの学会に出席して発表する予定である。また、新たにデータの収集を引き続きおこない、これらのデータ分析のために人件費・謝金を使いたいと考えている。
|