障がいのある子どもが産まれると、多くの人は、自分の考えていた子ども像、子育て像とは違う現実に落ち込む。インタヴューを行った研究協力者の方々も、1名の母親を除いて、みなが「ショック」を受けていた。しかし、面接の中で語られたのは、ただ「ショック」を受けただけではなく、決して思い通りにいかない日常の現状を、折り合いをつけながら生きている姿であった。 私たちの複線径路・等至性モデル(TEM)を用いた分析においても、何らかの出来事(障がい児自身の出来事、家族の出来事、母親の出来事)によって、受け入れては絶望し、絶望しては受け入れるといったことを繰り返していた。つまり、永続的なストレス、慢性悲哀は常に存在しながらも、「今」に対処しながら生きており、研究協力者のレジリエンスが確認された。しかし、ここで興味深いのは、協力者自身はレジリエンスが育まれていることを認識してはいない点であった。それゆえ、自分自身の「逆境や困難から立ち直る力」の存在やその内容を知ることは、それを上手く活用していく手立てになると考えるため、レジリエンスが育まれていることを知らせることも有効な介入であると考えられた。 本研究によって、色々な困難はあるが、どうにか折り合いをつけながら生きていることが、レジリエンスに他ならないということを広く発信することで、気持ちが楽になる家族が少しでも増えるのではないかと考える。多様な生き方、心理、選択、環境があると思うが、トータルとして、それでも生きているということが尊いことだと言える。
|