本年度は最終年度ではあったが、学校側の協力を得ることができたため、多くのデータを収集し続けることができた。公立小学校では2回の調査を行い、これらの結果を含めた学校適応の調査結果については、JUSTEC (日米教員養成協議会)にて発表した。その中には、小学1年の時点で学校適応していた子どもが小学6年の時点では不適応になっているなど、1回の調査では測定しきれないことを示した。このように、本研究は過去に行われていた縦断的データとIDを接続することが可能であったため、学会では縦断的調査結果として示すことができた。 結果においては、特に、長期的に不適応である子どもがそうではない子どもに比べて、社会的スキルや熟考するスキルが低いことを示したことが意義があったと思われる。これらのスキルと学校適応との因果関係は不明であるが、長期的に不適応である子どもが社会に適応するために必要なスキルが低いということは、彼らが年齢を重ねるにつれてますます社会適応が困難になることを示している可能性がある。学校適応は、学校だけの問題ではなく、長期的視点からの検討が必要であると考えられる。 また、本研究では、子どもの内的特性についても調べた。そこでは、不適応に分類される子どもであっても、実存感が高かったり、コミュニケーションスキルが高かったりするなど、不適応児の特徴もそれぞれ異なっていることが明らかとなった。このことから、長期的に学校不適応である子どもに対して、それぞれの子どもに適した接し方を継続的に続けることが大切であることが示された。 さらに、アメリカの研究協力者によって示されたアメリカの子どもに対する質問紙からいくつかの項目を抜粋して日本語版質問紙を作成し、日本の公立中学校で実施した。その結果、親子の関係性や学習意欲が日米で異なっており、学校適応の概念が日米で異なる可能性が示唆された。
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