平成30年度は生後10~14ヶ月児の自己感受性計測プログラムの開発に取り組み,そのプログラムに視線探知装置(アイトラッカー)を導入することを試みたが,アイトラッカーを用いて自動的に測定できるプログラムを構築することができなかった。本研究の目的は,母親の情動鏡映的な関わりが乳児の情動に対する自己感受性を高めて,それが1歳後半のときの他者の心の理解に促進的に関与するという仮説を抱え,自己感受性の発達は母親の関わりと他者の心の理解の発達の間を取り持つ媒介的な働きがあることを実証することである。それゆえ,本研究では独自に自己感受性を計測するプログラムを構築して実際に計測することが最も重要な課題である。 これまでに,タッチスクリーンを用いて,乳児が口を動かすとタッチスクリーン上の左右のどちらかの帽子が点滅し,点滅中の帽子に乳児自身が触れると帽子から動物が飛び出すというプログラムを作成し,生後10~14ヶ月児にそのプログラムを提示して,乳児が何試行目から自主的に口を動かして帽子から動物を飛び出させようとするようになるのかを検討した。しかしながら,なかなか適切な乳児の反応を得ることができず,スクリーン上の適切な場所とタイミングで触ることは乳児には難しいと考え,平成30年度は点滅する帽子を注視することで動物が飛び出るようにするプログラムを作成し直すことを試みた。アイトラッカーを購入して,現在も,乳児用のアイトラッキングのためのキャリブレーション・プログラムと注視データを活用した自己感受性のプログラムを検討している。
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