研究課題/領域番号 |
15K04103
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研究機関 | 独立行政法人大学入試センター |
研究代表者 |
内田 照久 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (10280538)
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研究分担者 |
大津 起夫 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 教授 (10203829)
伊藤 圭 独立行政法人大学入試センター, 研究開発部, 准教授 (60332144)
内田 千春 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (20460553)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育評価 / 音声 / コミュニケーション / リスニングテスト / 対人認知 / 性格特性 / 話者の個人性 / 声質 |
研究実績の概要 |
本研究は,わが国は元より世界規模で進行するグローバル化による多文化共生社会の到来を見据えて,多文化間コミュニケーション能力の総合的な教育評価の方法の開発を目的とする。そこでは,基本となる音声言語の運用能力の評価に加え,多文化社会で必要となる相手の特徴や意図を推測する対人的な認知能力,言語に留まらない外面的表現としての立居振舞いまで,測定対象として捉える。研究期間内は,マルチモーダルな新しいセンサーを利用して,リスニングテストを発展させた,対話場面でのコミュニケーション能力テストの開発を行うことをめざしている。本年度の主な研究成果は次の通りである。 1. 高校生を対象とした英語リスニングテストの実施体験 高校2年生を対象として,センター試験で使用するICプレーヤーを使った受験を体験する公開企画を行った。東北大学で行われた日本テスト学会の第15回大会にて,高校生約460名,教員,保護者,学会参加者を合わせた計531名が参加した。受験体験の他にも,センター試験の総得点と大学合格率の話題や,遅延聴覚フィードバックのデモも取り混ぜた企画を行うことができ,貴重なフィールド・ワークとなった。 2. 声の音色の変化に伴う基本周波数の高低と声の高さの印象の反転現象の検証 声質として伝達される話者の特徴の中でも,声道長の要素が,聞き手の声の特徴の認知に与える影響を検討した。音声の基本周波数の高低操作と声道長の拡大縮小をを模した声質変換音声を作成し,聴覚実験を行った。声質表現語による主観評価の結果,声道長の影響で,基本周波数の高低関係と声の高さの印象評価に反転現象が起こることを見出した。その研究成果は,Acoustical Science & Technology (vol.39(2))に掲載されたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果として,Acoustical Science & Technologyなどの学術雑誌において論文が公刊されたところである。また,学会での発表や公開企画の実施,さらにチュートリアル・ワークショップなども積極的に進められており,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
センター試験のような大規模試験におけるリスニングテストと,他教科科目のテストの関係に関する分析をさらに進める。 それに加えて,リスニングテストに用いられる音声について,発話様式のバリエーションの影響について探究する。特に,相手との心的な距離が近い場合に利用されることの多い,ささやき声の要因に迫る。実験では,標準的な音声から平滑化スペクトル包絡を抽出し,そのスペクトルを基にして,声帯音源の代わりに雑音で駆動して作成する疑似ささやき声の高品質化を図る。そのささやき声の主観評価を行うと共に,その変換音声を用いたリスニングテストの問題を作成し,発話様式の違いに伴う影響の検証も進める。また,英語音声をそのまま書き取るディクテーション課題も合わせて行い,さらに総合的な評価を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
話者の個人性の検討するための声質変換リスニングテストの聴覚実験について,その実施とデータ分析の作業を,平成30年度も継続して行うことになったため。
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