研究実績の概要 |
入院時におけるアンケート調査では、東北大学病院緩和ケア病棟で実施している家族教室の参加者50名に対して、死別に伴うリスクアセスメントツールであるBereavement Risk Assessment Tool(BRAT)を実施した。あわせて精神的健康度(Kessler Psychological Distress Scale: K6)およびレジリエンス(Tachikawa Resilience Scale: TRS)を測定した。その結果、BRATによる評価では、リスクなしには8名が該当し、リスク最少に17名、リスク小に20名、リスク中に4名、リスク高には1名が該当した。K6による精神的健康度では12名(24.0%)がハイリスク(10点以上)だった。BRATのリスクが高くなればなるほどK6の得点も高かった(ρ=0.30, p<0.05)。一方、レジリエンスの得点が高いほどBRATのリスクは低かった(ρ=-0.44, p<0.001)。 退院後のアンケート調査では、東北大学病院緩和ケア病棟に入院していた患者の家族を対象に実施した。347名に郵送し、173通の回答が得られた(回収率50%)。アンケートでは、K6、TRS、死別後対処尺度およびサポートのニーズについて尋ねた。その結果、K6による精神的健康度では28名(25.9%)がハイリスク(10点以上)だった。死別後に故人との絆の得点が高いほど精神的健康度が低く(r=0.25, p<0.01)、身体的サポートをより求めていた(r=0.21, p<0.01)。一方、生活志向性の得点が高いほどレジリエンスの得点が高かった(r= .36, p< .01)。 以上から、緩和ケア患者家族の精神的健康度は、患者入院時および退院後において一般人と比べて低かった。その中でもハイリスクに該当する家族を特定し、適切なサポートを行う必要性が明らかになった。
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