研究課題/領域番号 |
15K04109
|
研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
住吉 チカ 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (20262347)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 機能的転帰 / 統合失調症 / 認知機能 / 就労 / 意味記憶 |
研究実績の概要 |
【概要】 本研究は、①統合失調症患者を主とする精神疾患患者の就労の予測因を明らかにする、②就労の予測因間の関連を明らかにする、③機能的転帰と高次認知機能改善との連動について検討する、ことを目的する。 平成27年度は、①②の分析のために、申請者と連携する機関・施設において健常者・患者データを得た。そしてそれらの年齢・性別・教育年数など人口学的背景についてまとめた。また③の分析のために、語流暢性課題データの整理を行った。
【主な知見】 健常者・患者全体で、300名以上のデータを得た。それらについて、人口学的変数(性別・年齢・教育年数・知能)の分析を行ったところ、両群間に大きな差はなく、①-③について比較検討するのに適切なデータであることを確認した。また患者の認知機能低下について検討を行ったところ、発症後IQ単位で約10ポイントほど低下していることが分かった。 ③に関し、語流暢性課題発話データから意味記憶構造を明らかにする解析手法を検討した。発話語順を基にした従来の方法は、被験者数や発話語数に影響を受けやすい。そこで、発話アイテムの共起頻度を基にした解析手法を検討した。その結果、潜在意味分析と複雑ネットーワーク分析が、統合失調症患者の意味記憶構造の解析に有望であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に挙げた①-③に関して、連携機関から患者・健常者ともに300名以上のデータの供与が得られ、これらデータの人口学的変数について分析を終えた。さらに患者については、発症後の認知機能状態、及び発症前からの認知機能低下について分析を進めることができた。 ③に関して、語流暢性課題発話データについて、潜在意味分析や複雑ネットワークの解析手法を用いた予備的分析を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後以下のように研究を進める予定である(①-③は【研究概要実績】のそれらと対応):
① 統合失調症患者データについて就労状態の評価を行う。賃金雇用・家事・学業ごとに、患者が最近3か月で実質機能していた時間数を算出し、まず患者の認知機能との関連を明らかにする。 ② ついで、就労状態と日常生活技能・社会機能との関連を調べるために、日常生活技能と社会機能評価データの整理を行う。 ③ 潜在意味分析や複雑ネットワークの解析手法は開発されたばかりであり、その有効性について十分結果が蓄積されているとは言えない。予備分析結果を踏まえ、統合失調症患者の意味記憶構造解析への適用性についてさらに検討を行う。
|