研究課題
【概要】 本研究の目的は、①統合失調症患者を主とする精神疾患患者の労働状態の予測因を明らかにする、②就労の予測因間の関連を明らかにする、③機能的転帰と高次認知機能改善との連動について検討する、である。平成28年度までに③まで達成し、29年度は労働状態の予測因を用いて実際に患者の労働状態について予測を行った。平成30年度は、統合失調症患者における労働状態と生活の質との関連を縦断的に検討した。令和元年度は、今後の研究の進展に向け、高次認知機能と労働状態の関連を調べる手法の開発に着手した。【主な知見】 高次認知機能の評価手法として、カテゴリ流暢性課題、及びそれに対するテキストマイニングが有効であることを確認した。具体的には、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)施行前後のカテゴリ流暢性課題に対し、特異値分解法(Singular Value Decomposition, SVD)を適用し、意味記憶の構造の変化について調べた。その結果、施行後の患者の意味記憶は、施行前に比べ健常成人に近い構造となることをSVDの指標を用いて示した。この結果は、高次認知機能の評価法として、テキストマイニング手法が有効なことを示すものである。【現在までの達成度】【概要】に挙げた本研究の主目的(③まで)はほぼ達成できたといえる。上記のように、令和元年度は、研究の次段階、すなわち高次認知機能と機能的転帰の関連について調べる段階への足掛かりを達成できたといえる。【今後の研究の推進方策】語流暢性課題・テキストマイニングを用いた高次認知機能の評価法を確立し、その臨床応用として、意味記憶構造の指標を組み込んだ労働状態の予測式を導出し、予測を実践したいと考える。
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