研究実績の概要 |
双極性障害の平均発症年齢は20代前半とされているものの,それ以前の発達段階については注目されてこなかった。しかしながら,近年,子ども特有の双極性障害の存在が取り上げられるようになってきており,児童期の発症も少なくないことが報告されている(e.g., Blader et al., 2007)。とりわけ思春期は,双極性障害の発症を決定づけるリスクの時代(age of risk)となる可能性が懸念されており(Weissman et al., 1996),成人期の双極性障害の病像が見られる開始時期のピークは15~19歳の間に起こると指摘されている(Alloy et al., 2006)。さらに,双極性障害はうつ病よりも自殺企図率や再発率が高いことから,重症化する前段階での早期発見や早期介入が重要である。 双極性障害の関連要因については,臨床群や非臨床群を対象とした研究から,自己制御機能が双極性障害の脆弱性に関わる重要な特徴となる(Heissler et al., 2014)ことや,双極性障害やうつ病を含む精神疾患は,同時に認知機能の低下や障害を引き起こしている可能性も示されている(Millan et., 2012)。そこで本研究課題では,自己制御機能や認知機能が,どのようなプロセスを経て双極性障害傾向と関連しているのかを縦断的に検討することを目的とした。 平成27年度においては,思春期(15~18歳)を対象に調査研究を実施した。その結果,自己制御機能に関わる「ねばり強さ」や「興味・関心への一貫性」という特性が,双極性障害傾向と負の関連をもつことが認められた。
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