研究課題
双極性障害の平均発症年齢は20代前半とされているものの,それ以前の発達段階については注目されてこなかった。しかしながら,近年,子ども特有の双極性障害の存在が取り上げられるようになってきており,児童期の発症も少なくないことが報告されている(Blader et al., 2007)。また,成人期の双極性障害の病像を見ると,その発症年齢のピークは15-19歳であることが指摘されており(e.g., Alloy et al., 2006),うつ病よりも自殺企図率や再発率も高いことから子どもの双極性障害の早期発見や早期介入は重要である。そこで,本研究課題は,抑うつ症状や躁症状と関連の深い自己制御機能に着目し,思春期の双極性障害傾向に自己制御機能や認知機能がどのように関わっているのかを縦断的に検討することを目的とした。とりわけ,平成29年度においては,当初の予定通り第3波目のデータの取得と認知機能に関する実験課題調査を完了し,双極性障害傾向と自己制御機能や認知機能との関連について縦断データを用いた分析を実行している。これまでに得られた縦断データから,自己制御機能と双極性障害傾向の同時点でのレベル間の関連だけでなく,両変数の個人内変化における関連についての分析を行った。その結果,(1)自己制御機能に関わるPerseverance of effortと双極性障害傾向のレベル間に有意な負の相関が得られた(r=-.20, p<.01)。また,(2)Consistency of interestと双極性障害傾向にはレベル間での関連だけでなく,両変数の変化の間にも負の相関が認められた(r=-.25, p<.01)。このことは,自己制御機能のなかでも,特に子どもの物事(目標や計画など)に対する興味や関心の一貫性を増加させるような働きかけは,双極性障害傾向の低下にもつながることを示している。
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Journal of Multidisciplinary Healthcare
巻: 11 ページ: 121-130
10.2147/JMDH.S155352