子どもの性暴力やさまざまな問題行動の理解と介入のためのアプローチとして、ポジティブ心理学の発展を背景とするグッドライフモデル(Good Life Model;GML)がある。性暴力や問題行動の真のニーズを明らかにすることで、子どもがそのニーズを満たすための適切な支援やスキルの提供を行うものである。子どものグッドライフニーズは、成人に比べて「健康」に関する要素により重点が置かれており、精神的健康、身体的健康、性的健康につながる「安心・安全」な関係性や生活環境、肯定的な思春期を迎えることなどが重視されている。子どもの性的な問題行動の背景には、この「安心・安全」が阻害される体験があることが多く、健全な発達を阻害する要因の同定とそれに対する介入が求められる。 最終年度では、これまでにまとめたGLMの研究知見をふまえ、1)2つの対象への介入と評価の実施 2)支援学校および児童自立支援施設の教職員を対象としたGLMに基づくアセスメントの教育 3)国内外の学会での成果発表および情報収集 の3つの取り組みを実施した。 1)では、支援学校(高等部)におけるフィールドワークと事例検討から、性問題行動のある高校生(男女)のグッドライフニーズの同定と介入計画、評価を行った。支援学校における約3年間の生徒指導及び治療教育プログラムの実施の経過をまとめ、教職員での検討を実施した。また、児童自立支援施設の入所児童(主に中学生女子、各回 約30名)を対象とした6回の心理教育プログラムを3年間にわたり継続的に実施し、自他への信頼感やソーシャルスキル尺度を用いた前後評価を行った。2)として、支援学校において性的虐待当事者の語りを聴き、被害生徒のニーズを検討するワークショップ、さらに児童自立支援施設職員を対象としたグッドライフアセスメントの実施研修を行った。これらについては3)の学会発表等で結果を公開した。
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