本研究の目的は二つある。第一にセクシュアル・マイノリティに関する学校教員の意識変容・理解促進を目指したプログラムを作成することである。第二に日本以外のアジア諸国におけるセクシュアル・マイノリティの現状について明らかにし、連携することである。 平成30年度は、第一の目的に関して、平成29年度末に徳島県教育委員会と連携して作成した「性の多様性を理解する-教職員用ハンドブック-」を使用して、県内外の幼小中高特別支援学校の教職員、児童生徒、保護者を対象に研修を行った。教職員、児童生徒への効果検証に関するアンケートを実施した。その結果について海外の学会等で発表した。これらの研究の中で特に「マイノリティ共感」という概念が見出され、それを活用したプログラムの開発も行った。マイノリティ共感とは、多数派の人の中にも自分自身の中のマイノリティの部分に気づくことで、他のマイノリティの傷つきに敏感になり、共感性が生まれるというものである。現在は、質的研究によって本概念が見出されたので、今後、量的研究を行い、実証していく。 第二の目的に関して、平成30年度には、ヨーロッパ諸国でのセクシュアル・マイノリティに関する教育が進んでいる地域とあまり進んでいない地域があり、東ヨーロッパの研究者のかたへのインタビューを行った。西ヨーロッパの国々と政策等も異なり、差別の現状が明らかとなったと同時に、教員の意識の違いについても明らかとなった。その結果についてヨーロッパで開催された学会にて発表を行った。また、アジア諸国に関しては、2019年から始まる台湾での同性婚に関する事前インタビューを行っているので、今後はその経過をみながら過程や事後インタビューも必要であると考える。 これらの結果について、学校現場におけるセクシュアル・マイノリティの児童生徒、学生、保護者への支援に関する本を執筆した。
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