研究課題/領域番号 |
15K04130
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 光 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10304073)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経心理学 / 空間性注意 / 線分二等分検査 / gray scales task / testing effect / 地理的誤認妄想 / くすぐり / 詐病 |
研究実績の概要 |
(1)空間性注意の障害を検出するために開発された線分二等分検査を健常者に実施した研究から、健常者の空間性注意には左方へのバイアスが存在し、それは空間性注意における右脳の優位性を反映していると考えられてきた。しかし、高齢者ではその左方バイアスが消失することから、加齢により大脳機能の半球機能差が小さくなる可能性が示唆された。この加齢による左方バイアスの消失が、他の注意課題でも認められるかどうかを、オーストラリアのMattingleyら (1994)によって開発されたGrayscales taskを使用して検討した。18~85歳の110名の健常者のデータを分析した結果、注意の方向性と年齢の間には有意な相関は認められなかった。この結果について、第41回日本神経心理学会学術集会で口頭発表した。 (2)大脳半球機能差との関連が深い、性別、利き手、使用手がGrayscales taskに及ぼす影響を、左利き女子20名、左利き男子20名、右利き女子20名、右利き男子20名を対象として検討した。その結果、それらの3つの主効果、及び交互作用は何れも有意ではなかった。この結果について、第40回日本高次脳機能障害学会学術総会で口頭発表した。 (3)学習の定着にテストが有効であるというtesting effectについて、非言語材料を使用した記憶検査であるRey 複雑図形検査を材料として検討した。その結果、大学生の場合には一般的な言語材料ではなく非言語材料においてもtesting effectが認められること、またそれが1年間にわたって持続することが分かった。この研究結果を、Applied Neuropsychology: Adult誌に発表した。 (4)くも膜下出血後に、自分の出身地に作られた映画のセットのような擬似大阪の病院に入院しているという地理的誤認妄想を呈した症例を分析し、精神医学誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが,一部の研究で進捗の遅れが生じている。特に詐病の検出に関する研究においては,外部の研究協力者が確保出来ず、分析に必要なデータ数が不足している。また,くすぐりに関する研究の一部など,論文が完成していない研究がある。それに対して、Grayscales taskなど当該年度から開始した研究でも既にある程度の成果が得られたものもある。
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今後の研究の推進方策 |
詐病研究については、引き続き研究協力者を増やすよう努力する。29年度は,新しい研究パラダイムの創案・実施よりも、これまでの研究成果をまとめた論文作成に重点をおいて活動する予定である。最低でも3本の論文の投稿・掲載を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2本分の論文の作成、投稿、掲載に使用する予定だった金額が、論文作成と審査の遅れによって使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
審査が非常に遅れている論文があり、現在編集委員会に抗議を行っている。それ以外にも作成中の論文があり、主にそれらの校閲、投稿(審査料を含む)、掲載料(別冊代を含む)に使用する予定である。
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