(1)オーストラリアのMattingleyら (1994)によって開発されたGrayscales taskは、実施や数量化が容易な空間性注意のバイアスの測定法として、脳損傷患者や精神神経神経疾患の患者への応用が期待されている。この課題は読みの方向性の影響を受ける可能性が報告されているが、特殊な読みの文化を持つ日本人でのデータは少ない。そこで、日本の健康な成人で水平と垂直方向のGrayscales taskの基礎データを収集し分析を行った。今回の研究では特に利き手や、性別、使用手の効果についても同時に研究を行い、①特殊な読みの文化を持つ日本人でも、英語・ヨーロッパ語圏と同じ左方向、上方向への注意のバイアスが存在すること、②左利きであってもその傾向は変わらないこと、③性差や使用手の効果も認められないこと、を確認した。これらの結果は、認知機能の文化的な差異に関する国際比較研究として意義がある。また、Grayscales taskをわが国で基礎研究や臨床で使用する場合の、基準データとして有用である(投稿中)。 (2)高次脳機能障害者の神経疲労や感情の制御、さらには家族や介護者のストレスの低減にその効果が期待されているマインドフル瞑想を、さまざまセッティングで容易に実施できることを目指した簡易型プログラムの開発を行った。このプログラムは、マインドフルネスの代表的な手法である①「動きの観察」、②「呼吸の観察」、」③「身体感覚の観察」の3つのワークについて、週1回約80分のグループセッションを計4回実施し、その間に1日15分以上の自習(宿題)を義務づけるものである。精神科デイケアの通所患者10名(双極性障害2名,PTSD1名,強迫性の障害1名,うつ病3名,神経症2名,社会不安障害1名)を対象としたパイロットスタディでは、GHQ精神健康調査票28の得点や、自己受容尺度の得点において有意な改善が認められた。今後は、高次脳機能障害者やその家族への適用に関する研究を検討している。
|