研究課題/領域番号 |
15K04140
|
研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
川端 壮康 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (90565128)
|
研究分担者 |
古曵 牧人 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30633416)
大渕 憲一 東北大学, 文学研究科, 教授 (70116151)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 不表出性攻撃 / 怒り / 抑うつ / 感情調節 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画を変更し、不表出性攻撃が抑うつに至る過程を、普遍的な部分と文化に依存する部分とを明らかにすることを目的に、ロシアと日本の二国間の国際比較研究を先に推進することとした。 日本人に実施したのと同じ場面想定法による質問紙を、ロシア側研究グループがロシア語に翻訳し、ロシア人大学生に対して実施し、怒りと感情調節(抑制、再評価、気晴らし)が抑うつに与える影響について、日本人大学生のデータとロシア人大学生のデータを比較、分析した。 その結果、曖昧な社会的挑発場面を用いた場面想定法において、以下のことが明らかとなった。①ロシア人は日本人よりも、感情調節として抑制を用いる傾向があり、ロシア人においては怒り感情の抑制は抑うつを減少させた。②日本人はロシア人に比較して、感情調節として再評価を用いる傾向が強く、再評価は抑うつを増加させた。③気晴らしは、日本人とロシア人の両方において、抑うつを増加させた。④女性は男性と比較して、感情調節を用いる傾向が強く、抑うつを感じやすい。 これらの結果は、一般に、怒りを制御することで適応的な働きをするとされる感情調節が、一定の条件下では抑うつという新たな不適応を引き起こすことを示している。そして,怒りを感じる場面で主に用いられる感情調節の種類は文化によって異なるとともに、その怒りの制御がもたらす影響についても、文化による違いがあることを示している。このことは、現在用いられているアンガー・コントロールなどの怒り制御のプログラムが抑うつという別の不適応を引き起こす恐れがあり、しかもその影響のあり方は、文化によって異なる可能性があることを明らかにするという意義がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画においては、本年度は、日本人大学生を対象に、場面想定法による質問紙調査によって明らかとなった不表出性攻撃が抑うつに至る過程について、調査協力者が日常生活の中で怒りを抱いた場面を材料に、その後の心理面での変化を記載してもらう日誌法、及び学生相談等の臨床事例の検討を通じて確認することを計画していた。 しかし、ロシアの研究グループとの共同研究の可能性が得られたことから、当初の計画を変更し、不表出性攻撃が抑うつに至る過程について、感情調節が果たす役割を中心に、普遍的な部分と文化に依存する部分とを明らかにすることを目的に、ロシアと日本の二国間の国際比較研究を先に推進することとした。 そのため、当初の研究計画の遂行に照らせば、その進捗状況はやや遅れていると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画に戻り、日本人大学生を対象に、場面想定法による質問紙調査によって明らかとなった不表出性攻撃が抑うつに至る過程について、調査協力者が日常生活の中で怒りを抱いた場面を材料に、その後の心理面での変化を記載してもらう日誌法、及び不表出性攻撃が抑うつを引き起こすことが問題となっているような臨床事例の検討を通じて、実際の不適応事例における確認する予定である。 なお、初年度の調査において得られた国際比較の結果については、更なる発展を目指し、ロシア以外の国における共同研究の可能性を探ることも行っていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初に計画していた,日誌法による質問紙調査を実施しなかったため,調査協力者に対する謝礼,及びデータ入力等の人件費を使用しなかったため,次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度において,日誌法による質問紙調査を実施するので,調査協力者に対する謝礼,及びデータ入力等の人件費として使用する予定である。
|