研究実績の概要 |
平成27年度には先行研究の展望ならびに【研究1:コンドーム使用時の羞恥感情の適応的機能に関する検討】を行った。コンドーム使用時には羞恥感情が強く生起し,それがコンドーム使用を強く阻害することが指摘されてきた(e.g., 樋口・中村, 2010, 社会心理学研究; Moore, et al., 2006, Psychology, Health & Medicine)。したがってその羞恥感情の抑制が適切なコンドーム使用にとっては重要なことである。しかしながらそれは簡単ではない。なぜなら羞恥感情を感じることには何らかのメリットがあると考えられるからである。 たとえばFeinberg, et al. (2012, JPSP) は,羞恥の表出が表出者に対する向社会的評価を高め,他者からの信頼獲得につながることを示した。またKeltner (1995) は羞恥に伴う赤面には他者からの制裁に対する緩和(appeasement)機能があることを示した。これらの研究結果は,羞恥の持つポジティブで適応的な社会的機能,すなわちメリットを明らかにしたものであると言える。 そこで本研究課題では,羞恥感情による適応的社会的機能を明らかにし,それを制御した上でのコンドーム使用の促進を目指している。 今年度はコンドーム使用時の羞恥に伴う社会的機能を明らかにすることを目的とし,まず文献研究を試みた。上述もその成果の一部である。しかし,コンドームと羞恥感情に関する研究はきわめて少なく,直接的にコンドーム使用時の羞恥感情の社会的機能を扱った検討はほとんど存在しない。そのため,広く健康行動とそのメリットに関する先行研究の展望を行った。こうした文献的検討を元に,コンドーム使用時の羞恥表出の機能を明らかにする研究1の準備を行った。
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