研究課題/領域番号 |
15K04145
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
樋口 匡貴 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60352093)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 羞恥感情 / 社会的機能 / 性感染症予防 / HIV / コンドーム |
研究実績の概要 |
平成28年度には先行研究の展望ならびに【研究1:コンドーム使用時の羞恥感情の適応的機能に関する検討】を行った。コンドーム使用時には羞恥感情が強く生起し,それがコンドーム使用を強く阻害することが指摘されている。したがってその羞恥感情の抑制が適切なコンドーム使用にとっては重要なことである。しかしながらそれは簡単ではない。なぜなら羞恥感情を感じることには何らかのメリットがあると考えられるからである。そこで本研究課題では,羞恥感情による適応的社会的機能を明らかにし,それを制御した上でのコンドーム使用の促進を目指している。 平成28年度は,男女各50名の成人(20~25歳)を対象に調査を行い,セックスの際にコンドームを使用している人物のイメージの測定を試みた。コンドームを堂々と使用している男性あるいは女性、コンドームを恥ずかしそうに使用している男性あるいは女性についてそのイメージを自由に記述させ、さらにそのイメージについてネガティブ(1点)からポジティブ(7点)の次元上での得点化を求めた。その結果、それぞれの対象に対してネガティブ・ポジティブ両側面のイメージが付与されたが、その内容は対象に応じて大きく異なっていた(堂々-女性には「慣れてそう」「下品」vs. 堂々-男性には「誠実」「当たり前」、恥ずかしそう-女性には「可愛らしい」「純情」vs. 恥ずかしそう-男性には「気弱」「不慣れ」など)。さらにその得点についても、各対象で違いが見られ、コンドームを堂々と使用する女性に対するイメージの得点(4.25)が堂々と使用する男性(4.86)や恥ずかしそうに使用する男性(4.57)、恥ずかしそうに使用する女性(4.84)よりも低いものとなっていた。これらの結果から、コンドーム使用時における羞恥表出のジェンダー差が重要なものであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1の完了までは順調に進展している。しかしながら参加者への侵襲性を低く保った状態での研究2の実施の困難性が新たに発見され,それに対する対応の検討に若干時間がかかっている。そのため,研究2および3の実施の遅れが予見されるが,より適切な形での研究の進行のためには不可欠な段階にあると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降も,基本的に平成28年度と同様に研究を推進する。直接的・間接的に関連する文献の注意深い精査を行い,それを元にデータ収集の計画を立案する。参加者に対する倫理的な配慮を十分に整えた上で学内の研究倫理審査委員会にはかり,許可が出た段階でデータ収集を行う。 また今年度は特に実験的な研究を予定している。確実な実験参加者確保のために,現在所属研究室において推進しつつある研究参加者の登録システムの利用を前提とし,確実な研究遂行を期する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定においては,平成28年度において研究2を完了させる予定であった。しかしながら研究1の結果より対象者の選定や実験の実施により注意を払う必要性が新たに生じた。そのため平成28年度ではその対応策の検討を行い,研究2のために使用する予定であった額を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
「研究2:コンドーム使用の羞恥感情の適応的機能に関する実験的検討」および「研究3:コンドーム使用時の羞恥感情の制御を目指した介入プログラムの効果研究」の実施費用として使用する。その際,研究1で明らかになったジェンダー差を重要な変数として位置付ける必要が生じたため,より多くのサンプルサイズが必要となる見込みである。今後の検討によっては,研究2と研究3とを1度のサンプリングによって実施する可能性もある。
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