研究課題/領域番号 |
15K04146
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
向井 隆代 聖心女子大学, 文学部, 教授 (00282252)
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研究分担者 |
齊藤 千鶴 聖徳大学, 心理・福祉学部, 講師 (20407597)
佐伯 素子 聖徳大学, 人文学部, 教授 (80383454)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 児童養護施設 / 心理社会的発達 / レジリエンス / 縦断的研究 / 適応 |
研究実績の概要 |
児童養護施設に入所中の児童を対象に、幼少期に虐待等の困難を伴う生育環境にあった児童の心理社会的発達の様相をとらえ、児童期から青年期前期にかけての長期的な適応を支える要因を明らかにすることが本研究の目的である。協力先施設での担当職員への面接調査・質問紙調査ならびに児童の個別面接や行動観察をおよそ年次ごとに行い、現在も追跡調査中である。児童の生育歴や入所の経緯等の基礎資料に加え、気質的特徴、自己制御などの行動特徴、自己効力観、家族イメージ、対人関係の枠組み等を査定し、それらの発達的変化や安定性を追跡している。 これまでの分析結果から、特に対人関係の枠組みにおいて重要他者が定まっていない女子児童においては、内在化された問題行動すなわち不安や抑うつの傾向が高いことが認められた。平成29年度は、年長児から小学校低学年までの児童64名のうちすべてのデータがそろっている53名(平均年齢7歳3ケ月)の累積データを再分析し、愛情欲求を向けることができる重要他者が定まっていない女子児童は、重要他者が定まっている女子児童や男子児童に比べて、不安・抑うつなどの内在化された問題行動が多いことを確認した。外在化された問題行動や問題行動全体に対して、被虐待経験の有無や性差は認められなかった。以上の結果を、日本発達心理学会(平成30年3月)で発表した。 対人関係の枠組みが、特に施設入所している女子児童においては保護因子となりうる可能性を愛着の側面より詳細に検討するため、研究代表者が平成28年度に研修を受講した児童愛着面接(Child Attachment Interview)の事後課題とコーディングの信頼性テストに引き続き取り組んだ。平成30年3月にAnna Freud Centreより児童愛着面接の正式なコーダー(面接実施および査定)の資格を取得し、日本語版面接マニュアルの作成に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度から29年度にかけては、協力施設が小規模グループホームや地域の支援センターを開設するなど児童養護施設の組織に複数の改変が続いた。それらにともない、入所児童の居住環境が変わったり、担当職員の配置換えがあったりしたため、協力児童が新たな生活環境に慣れるまで直接面接や行動観察によるデータ収集を控え、質問紙調査のみの依頼を行った。特に低学年児童のデータ収集に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、協力施設への訪問を再開し、低学年児童を対象に個別面接や行動観察を実施し、やや遅れているデータの収集に努める。児童愛着面接の実施準備を行い、小学校3年生以上の児童を対象に、面接への協力を求める。 横断的分析と縦断的分析を行うためのデータベースの作成を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、協力施設の組織改変により生活場所が変わった協力児童が多数いたため、彼らが新しい生活環境に慣れるまで直接訪問によるデータ収集を控え、質問紙調査を行った。また、Anna Freud Centreによる児童愛着面接の研修受講後の課題の多くをインターネット経由で進めることが可能であった。以上の理由より、旅費の執行が予定額より少なかった。 平成30年度は、協力施設を訪問し年次ごとのデータ収集の不足分を補うほか、データベースの管理、統計分析および個人面接記録のコード化のために臨床心理士資格をもつ研究補助者を雇用する。さらに、児童愛着面接実施に向けた打ち合わせを含む海外出張を予定している。以上の研究計画により、旅費と人件費を執行する予定である。
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