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2016 年度 実施状況報告書

フォーカシング・プロセス筆記の効果

研究課題

研究課題/領域番号 15K04147
研究機関日本女子体育大学

研究代表者

酒井 久実代  日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (00308090)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードフォーカシング / 筆記効果 / 精神的健康 / フェルトセンス / 体験過程尊重尺度 / 振り返り日記
研究実績の概要

フェルトセンスの象徴化傾向を測定する項目を作成し、体験過程尊重尺度に加えて、フォーカシング的態度を測定した。研究1ではフォーカシング的態度の「距離」「受容」は男性の方が有意に高く、「象徴化」は女性の方が有意に高いことがわかった。またフォーカシング的態度から心理的ストレス反応に負の影響、心理的ストレス反応から主観的幸福感に負の影響、フォーカシング的態度から主観的幸福感に正の影響があることがわかった。本研究は「サイコロジスト:関西大学臨床心理専門職大学院紀要」に掲載された。
研究2ではフォーカシング的態度の「注意」と「象徴化」がポジティブ感情経験頻度を高めることで精神的健康度を高めること、また「距離」と「受容」はネガティブ感情経験頻度を低下させることで精神的健康度を高めることがわかった。フォーカシング的態度の各因子の機能の違いを明確化することができた。本研究は学術雑誌に投稿中である。
研究3では振り返り日記を書くことが、心理的ストレス反応、本来性に及ぼす影響を検討した。本研究は医学系研究倫理審査委員会に申請し、承認を得た上で実施した。事前に質問紙調査により心理的ストレス反応、本来性を測定した。日記課題は出来事筆記群、感情筆記群、フェルトセンス筆記群の3群を設けて1か月間、実施した。実施直後、1か月後に同様の質問紙調査を実施した。その結果、事前よりも日記課題実施後に心理的ストレス反応が有意に低下し、本来性が有意に高まることがわかった。振り返り日記を書くことにより、自身の体験過程に注意を向けることが促進され、精神的健康度が高まったと考えられた。3群間の違いが明確に見られなかったのは、日記を書く際に、気がかりなこと、うれしかったことについて想起し書かせたことにより、全ての群で感情経験に注意を向けさせたためだと考えられる。本研究は平成29年度の日本人間性心理学会で発表することになっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成28年度に実施予定の筆記課題を用いた実験を行うことができた。本研究の目的はフェルトセンスの筆記が精神的健康に与える効果を検討することであった。勤務校の医学系研究倫理審査委員会に申請し、承認を得てから実験を行った。質問紙調査も合わせて実施し、統計的な分析を行い、結果をまとめることができた。本研究ではフェルトセンスの筆記の効果を明確にすることはできなかったが、振り返り日記により体験過程に注意を向けることが促進され、精神的健康度を高めることを見出すことはできた。以上の研究成果は、平成29年度の日本人間性心理学会で発表することになっている。
さらに平成28年度に実施予定であった質問紙調査研究と実験研究のうち、質問紙調査を実施することができた。本研究の目的はフェルトセンスの象徴化を含めたフォーカシング的態度と怒りの感情制御傾向との関連性を検討することである。フォーカシング的態度は怒りによる思考の未統合感に影響を与え、怒りの反復思考を弱め、怒りの鎮静効果があるのではないかと推測された。現在までにデータ入力が終了したので、今後共分散構造分析により予測を裏付ける結果が得られるかを検討する予定である。また、質問紙調査の際に、次の筆記課題の実験への協力も呼びかけたので、連絡先を知らせてくれた学生に対して、実験の呼びかけを行う予定である。
平成28年度実施予定の実験がまだできていないという点で、進捗状況は遅れていると言わざるを得ない。理由としては、本研究を進める前に科研費の研究課題とは別の、心理臨床実践に関する事例研究を投稿論文としてまとめることになり、本研究にあてる時間と労力が少なくなってしまったことがあげられる。この実験研究は平成29年度に行う予定である。
平成29年度は筆記課題が怒り感情制御に及ぼす影響を検討する実験と筆記課題が抑うつに及ぼす影響を検討する実験をともに実施し、結果を出す予定である。

今後の研究の推進方策

平成29年度の前期にフォーカシング的態度と怒りの感情制御傾向との関連性を検討する質問紙調査研究のデータ分析を行う。フォーカシング的態度が「思考の未統合感」などに影響を及ぼし、それが「怒りの維持」に影響するとするモデルについて共分散構造分析により検討する。結果をショートレポートとして論文化し投稿する。
怒りの感情制御に関する筆記課題の実験研究を行うため、7月初旬に医学系研究倫理審査委員会に申請する。「出来事筆記群」、「フェルトセンス筆記群」、「統制群」を設ける実験を9月に実施する。実験終了直後、1週間後、1ヵ月後に怒り感情制御に関する質問紙調査を実施する。
8月に開催されるアジア国際フォーカシング学会のラウンドテーブルで平成28年度に実施したフェルトセンスの象徴化を含むフォーカシング的態度の各因子の機能に関する研究結果を報告する。9月に開催される日本人間性心理学会で平成28年度に実施したフェルトセンスの筆記を含む「振り返り日記」が心理的ストレス反応、本来性などの精神的健康に及ぼす影響を検討した実験研究の結果を発表する。
平成29年度の後期に怒りの感情制御に関する筆記課題の実験研究のデータ分析を行う。質問紙調査研究の結果と合わせて論文化し投稿する。
フェルトセンスの筆記が抑うつに及ぼす影響について検討する筆記課題の実験研究を行うため、12月初旬に医学系研究倫理審査委員会に申請する。事前の質問紙調査により「抑うつ高フォーカシング的態度高群」、「抑うつ低フォーカシング的態度高群」、「抑うつ高フォーカシング的態度低群」、「抑うつ低フォーカシング的態度低群」を設け、フェルトセンスの筆記課題の実験を2月に実施する。事前にフェルトセンスの筆記の仕方についての指導を行う。実験終了直後、1週間後、1ヵ月後に抑うつに関する質問紙調査を実施し、その後データ分析と論文化を行う。

次年度使用額が生じた理由

実験参加者の提出物に不足があり、2名分の謝金を支払うことができなかったので、未使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

提出物がそろいしだい、謝金を支払うために使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] フェルトセンスの象徴化を含めたフォーカシング的態度の測定 ―因子構造、性差、および精神的健康の因果モデルによる検討―2017

    • 著者名/発表者名
      酒井久実代・河﨑俊博・池見 陽
    • 雑誌名

      サイコロジスト: 関西大学臨床心理専門職大学院紀要

      巻: 7 ページ: 9-18

  • [雑誌論文] 国内におけるPerson-Centered Experiential Approachの研究分布図 ~学会誌を中心として~2017

    • 著者名/発表者名
      小野真由子・河﨑俊博
    • 雑誌名

      関西大学心理臨床カウンセリングルーム紀要

      巻: 8 ページ: 57-65

  • [学会発表] フォーカシング指向心理療法における見立てとは?」『フォーカシング指向心理療法における見立ての位置づけ―他学派との共営を目指したモデル―2016

    • 著者名/発表者名
      河﨑俊博
    • 学会等名
      日本人間性心理学会第35回大会
    • 発表場所
      九州産業大学
    • 年月日
      2016-08-29
  • [学会発表] フェルトセンスの象徴化を含めた体験過程尊重尺度と精神的健康との関連性の検討2016

    • 著者名/発表者名
      酒井久実代・河﨑俊博・池見 陽
    • 学会等名
      日本人間性心理学会第35回大会
    • 発表場所
      九州産業大学
    • 年月日
      2016-08-28
  • [学会発表] The relationship between Focusing attitudes, feelings and mental health2016

    • 著者名/発表者名
      Kumiyo Sakai & Akira Ikemi
    • 学会等名
      27th International Focusing Conference
    • 発表場所
      Cambridge, UK
    • 年月日
      2016-07-22
    • 国際学会
  • [学会発表] Frequently overlooked principles of experiencing & how they can enhance your practice.2016

    • 著者名/発表者名
      Akira Ikemi
    • 学会等名
      27th International Focusing Conference.
    • 発表場所
      Cambridge, UK
    • 年月日
      2016-07-21
    • 国際学会
  • [図書] 絶対役立つ臨床心理学 ―カウンセラーを目指さないあなたにも2016

    • 著者名/発表者名
      河﨑俊博
    • 総ページ数
      258(163-176)
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

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公開日: 2018-01-16  

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