怒り経験の筆記が感情状態と精神的健康に与える効果を検討する実験研究の分析を行った。フォーカシング・プロセスに基づく筆記すなわちフェルトセンス筆記群、感情を記述する感情筆記群、統制群を設け、筆記前後に「状態怒り」を測定したところ、有意差は見られなかった。「状態怒り」が大きく低下している実験参加者を低下群とし、それ以外の低下なし群と比較したところ、低下群はGHQの「一般的疾患」が有意に低く、「不安と抑うつ」が有意傾向で低かった。また筆記終了1週間後、3週間後においても低下なし群よりも「状態怒り」が低かった。以上のことから、怒り経験を何らかの方法で筆記することにより怒りを低下させることが出来る人は精神的不健康の程度が低いことが示された。筆記による「状態怒り」の低下が継続することを示すことができた点に意義がある。 心の整理と心の色を塗るという方法でフェルトセンスの筆記を継続的に行うことが精神的健康に与える効果を検討する実験研究の結果を分析した。筆記前、筆記直後、3週間後に心理的ストレス反応、GHQ、本来感尺度、体験過程尊重尺度言語化版を実施し、検討したところ有意差は見られなかった。フォーカシング的態度の「言語化」因子の高低群で比較したところ、有意な交互作用が見られ、言語化高群は筆記直後に「過敏」が低下し、言語化低群は増加することが示された。また高群は「うつ」が3週間後に低下したのに対し、低群は増加した。さらに高群は「本来感」が3週間後に増加したのに対し、低群は低下した。以上のことから、フェルトセンスを言語化する態度が高い人がフェルトセンスの筆記を継続的に行うことにより、精神的健康が高まることが示唆された。フォーカシング的態度の「言語化」の高低により、フェルトセンスの筆記の効果が異なることを示すことができたことは意義深い。今後はデータ数を増やして確認する必要がある。
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