研究課題/領域番号 |
15K04149
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
熊上 崇 立教大学, コミュニティ福祉学部, 助教 (40712063)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心理発達アセスメント / フィードバック / 司法心理学 |
研究実績の概要 |
司法領域(少年触法事例や裁判員裁判など)で,心理や発達検査によるアセスメントが実施された場合,検査を受けた人(被検者)に,どのように検査結果を伝えるのか,被検者へのフィードバック面接やフィードバック書面の方法について明らかにするため,初年度は以下の研究を行った。 1,司法領域ではない心理発達検査の実施者に対して,フィードバック面接や書面をどのように実施しているかのアンケート調査の実施。2,裁判員裁判において,心理学者が心理アセスメントを実施した際に,どのように裁判員に心理アセスメント結果を報告すれば良いかを明らかにするために,大学生を対象として模擬裁判事例による心理アセスメント結果の説明を行い,どのように受け止めたのかのアンケート調査を実施。3,実際の青少年に対して心理発達検査を実施し,フィードバック面接を子ども本人,保護者,支援者に対して行った。その際に,わかりやすいフィードバック用の書面(アドバイスシート)を作成し,子どもの認知特性や具体的な指導法などを子ども,保護者,支援者と共有した。 司法領域では,原則的に心理アセスメント結果は司法機関や専門機関へ向けたものであり,被検者本人に伝えられることはまれであるが,被検者やその家族,支援者が自己の特性や長所を知ることで,行動が改善されるきっかけになる。そのために,被検者本人や家族が分かりやすいアドバイスシートの作成を実施した。これらは,KABCアセスメント学会誌の第18巻に投稿し,現在印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,司法領域ではない心理発達アセスメントの専門家による調査を行った。その結果,子どもへのフィードバック面接を実施しているのは,中高生など思春期以降を対象とする専門家の72%で,フィードバック面接を実施する理由は,子ども自身の自己理解や課題解決能力を高めることが最も多いことが明らかになった。またフィードバック書面については,思春期対象の専門家のうち54%であり,そのうち標準得点などの数値を記入しているのは42%であった(KABCアセスメント研究,熊上,印刷中)。数値の取り扱いについては,本人の行動や情緒に役立つと判断した場合のみであるが,それよりも具体的方策や特性を重視すべきとの回答も見られた。以上の結果は,司法領域ではない一般の心理アセスメントの専門家の傾向として把握しておき,次年度以降の司法領域における心理アセスメントのフィードバックに関する調査につなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は,司法領域の心理アセスメント担当者へのアンケート調査またはインタビュー調査を行い,被検者である子どもや家族に対するフィードバック面接の方法や書面の作成について,明らかにする予定である。 また,フィードバックは,実際の子どもや家族の立場も踏まえて実施されることが望ましいため,これまで心理発達検査を受けた保護者に対するグループインタビューも実施する予定である。 また,司法領域のアセスメント(例:少年非行や親権のアセスメント)に関する国際学会に出席し,国際的な司法領域のアセスメントの取り扱いに関する動向を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は,司法領域の心理アセスメントに関する国際学会への参加を2回予定していたが,研究代表者の都合により不参加であったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目以降は,計画どおり司法領域の心理アセスメントに関する国際学会への参加や海外の司法領域のアセスメント担当者へのヒアリング調査を行う。また,心理発達アセスメントとそのフィードバックに関するアンケート調査を実施するのに使用する予定である。
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