研究課題/領域番号 |
15K04149
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
熊上 崇 立教大学, コミュニティ福祉学部, 助教 (40712063)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心理アセスメント / 司法心理学 / フィードバック / 情報共有 |
研究実績の概要 |
当年度は,司法領域のアセスメントとフィードバックに関する量的調査(アンケート調査)と質的調査(インタビュー調査)を実施した。 量的調査は,日本犯罪心理学会会員に対してアセスメント結果の共有やフィードバックについてアンケート調査を行った。回答数は124件(回収率14.5%)であった。結果は,司法心理アセスメントの目的として重要な順に,1「裁判所への処遇判断のため」,2「矯正施設での支援への活用のため」,3「矯正施設出所後の保護観察所や地域生活支援機関に活用するため」,4「アセスメントを受けた本人へ理解促進」,5「保護者・支援者への理解促進」であった。また,本人や保護者へのフィードバックは63%が実施しており,67%が必要性ありと回答していた。 質的調査(インタビュー調査)は,心理アセスメントとそのフィードバックを受ける当事者側のニーズを探るため,大阪LD(学習障害)親の会,埼玉県の発達障害の保護者団体であるNPO法人「おやじりんく」にて,心理アセスメントとフィードバックをどのように受けたか,加えて望ましいアセスメントとフィードバックの在り方についてうかがった。その中で,LD親の会などの当事者団体は,少年鑑別所が地域支援として実施している心理検査に積極的で詳しいフィードバックを受けており,そのことで親の子どもへの理解が深まったり,学校や医療機関との連携の資料となることが明らかになった。 司法領域(家庭裁判所や鑑別所,少年院,刑務所など)での心理アセスメント結果は,本人や保護者,支援チームへの情報共有やフィードバックは十分に行われておらず,地域の医療・福祉につなぐ際にタイムラグが生じることがインタビュー調査などで明らかになった。今後,司法ケースの地域生活移行支援のためには,心理アセスメント結果を早めに地域の福祉・医療機関などの支援チームと共有することが適切な支援となろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
司法領域のアセスメントとフィードバックについて,3カ所の地域生活定着支援センターおよび1カ所の国立施設への訪問・インタビュー調査を行い,論文として発表した。また,当年度は司法領域のアセスメントとフィードバックの実情および専門職の意見について,日本犯罪心理学会会員や地域生活定着支援センターへのアンケート調査を実施した。これについては現在論文作成は終了し,学会誌への投稿準備中であり、研究計画は順調に進展している。ただし、科研費助成期間の延長により,さらに調査結果を精緻に分析し学会発表などをしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当年度に行ったアンケート調査およびインタビュー調査についてさらに成果を精緻化して,司法領域の心理アセスメント結果を,インフォームドコンセントのもと本人や保護者,支援チームに伝えるための情報共有システムの構築,およびその際の書式の在り方についてさらに研究をすすめていく予定である。そのうえで,司法領域の心理アセスメント結果は,アセスメント実施機関と本人・保護者の共有物であるという理念をまとめ,実際に司法領域の支援活動を行っている団体とも協働して明らかにしていく。さらに,司法領域のアセスメント結果の情報共有の在り方について,科研費助成期間を1年間延長し,具体的方法を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の海外での学会発表を予定していたが,2017年度は実施することができずに次年度使用額が生じており,次年度に量的調査の結果を精緻化したうえで,海外学会発表および論文発表を行う予定である。
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