研究課題/領域番号 |
15K04150
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
田中 輝美 立正大学, 心理学部, 教授 (60272879)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 未来時間展望 / イメージ / 注意バイアス / 精神病理傾向 |
研究実績の概要 |
年度をまたいで2回目の調査研究を行い,未来時間展望は近未来イメージと遠未来イメージによって操作できること,不安等の精神病理傾向と関連があることを確認できた。この結果は日本カウンセリング学会第49回大会にて公表済みである。 次に実験を実施した。大学生50名(男性6名,女性44名,平均年齢=19.02歳,年齢SD=17.56)を対象に,長い刺激提示(1500ms)による外因手がかり課題を,近未来イメージと遠未来イメージ後それぞれに実施し,年齢関連ポジティビティ効果とみなされる注意バイアスが検出されるかどうかを検討した。(同時にイメージの鮮明さ評定,未来時間展望尺度への回答,ポジティブ感情とネガティブ感情の測定も行い,イメージによる未来時間展望操作の確認も行った)その結果,ポジティブな物の画像刺激に対する交互作用が有意となり,単純主効果検定を行ったところ近未来イメージ後で社会不安低群が社会不安高群よりも,社会不安低群では近未来イメージ後の方が遠未来イメージ後よりも有意により大きなバイアスを示していた。社会不安という精神病理傾向が低い者の方が,限定的未来展望誘導後には社会不安の高い者よりもポジティブな物画像刺激への回避が減少しており,ネガティブ刺激については予想された結果を得られなかったが,ポジティブな物の画像刺激に対しては回避が減少するという方向で年齢関連ポジティビティ効果とみなされる注意バイアスが検出されたとみなしうる結果であった。回避が減少するという消極的な結果ではあるが,そもそも長い刺激呈示による抑制効果が有意に認められている状態での結果であるので,仮説は支持されたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追加採択であるので,半年分研究のスタートが遅れている。 このため,もう一つの実験研究が残されているが,スタートの遅れを考慮すれば妥当な進捗状況であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に残りの実験研究を行う。 平成28年度の実験と同様なものなので,実験開始の準備はなんら問題はない。 データの収集は時間的には十分可能であるが,報告書の作成に,やはりスタートが遅れた分の時間が必要となる可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は追加採択によるもので,研究のスタートが半年遅れている。 調査研究は一定期間をおいて二回実施される必要があったため,年度をまたいで行われた。これに伴い当初平成28年度に実施する予定であった二つの実験のうち,一つしか実施できなかった。このため次年度使用額が生じたと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究のスタートが半年遅れはしたものの,進捗は計画通りである。 平成29年度に実験を行えば,実験補助,被験者への謝礼,データの処理などで,順調に消化されると考える。
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