研究課題/領域番号 |
15K04150
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
田中 輝美 立正大学, 心理学部, 教授 (60272879)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 未来展望 / イメージ / 注意バイアス / 不安傾向 / 抑うつ傾向 |
研究実績の概要 |
本研究は,近年注目されている心理病理と情報処理との関連に,各人が抱いている未来の見通しという未来展望という新たな要因の影響を指摘しうるかどうかを検討することを目的とした。そこでまず第一に,加齢に依らずに近未来・遠未来に起こりそうな場面のイメージ想起によって未来の時間の展望を操作することが青年期の大学生に可能かどうか,不安やうつの傾向の高さによる影響を考慮しつつ確認を行った。第二に,未来の時間の展望を操作することによって,不安やうつといった様々な心理病理に関わるとされる情報処理バイアス(特に先行研究の結果が不一致な注意バイアス)が生じるかどうかを検証すること,その際,特に社会不安傾向の高低とその傾向に由来する刺激価の差違による影響を統制し,心理病理と未来時間展望による情報処理バイアスの関連を検討した。 まず,イメージによる操作を行った2回の調査によって,青年期の若者であっても老人にみられるという未来展望の状態に誘導することが可能であることが確認された。また,不安や抑うつという個人の心理病理傾向の高い者は拡散的未来展望の程度が低いということが示され,心理病理傾向が未来展望の程度に影響することが確認された。次に,個人の心理病理傾向を統制した実験群・統制群を用意し,それぞれに情報処理バイアスが生じるかどうかを検討する実験を行った。その結果,うつについて統制し,長時間の刺激呈示を行ったものでは,拡散的未来展望下では注意の解放困難を示した一方で限定的未来展望下では示さないといった,本研究の仮説設定時に基にした未来展望の理論が提唱するポジティビティバイアスを示した。その一方でうつの程度の統制を緩めた実験では,課題に関する現象が強く現れてしまい,仮説とは逆の結果を示した。これらをふまえて行った対人不安傾向による統制を行った実験は,現在分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
採択自体が半年遅れであった。当初は進捗を速めることができると考えたが,国家資格対応のために通常業務の加重による影響もあり,予定よりも加速することができなかった。また,実験も,結果をより詳細に考察するために予定より多く実施したため,昨年度に延長の申請を行った。データは全て得たので,今年度中に報告書の作成は可能である。
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今後の研究の推進方策 |
データは全て得たので,今年度中に報告書の作成は可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
採択が半年遅れであり,研究自体が全体的に遅れたため。予算消化状況は妥当であると考える。
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