非行・犯罪に至る過程は男女で差異が認められる。女性の影響を受け犯罪に走る男性は稀であるが、女性犯罪者には異性問題が絡むことが少なくない。また、子ども時代、成人になって以降を問わず、様々な被害経験を有している女性犯罪者も少なくない。これらの背景の違いを考慮した処遇が、再犯防止や社会への再適応に向けては肝要である。そこで、米国での女性犯罪者への処遇情報を入手するために、Covington Curriculum Conferenceに参加し、刑事司法制度の中で女性犯罪者がいかに扱われているかや、女性犯罪者等に対するトラウマ経験への働きかけの情報収集を行った。また、AJFO (association for justice-involved females and organizations) Conferenceにも参加し、虐待等が心身に及ぼす影響についての近年の研究やGirls Circleなどの女子非行少年や女性犯罪者の再適応に向けたプログラム情報を入手した。 また、国内でも現状調査を行った。女性専用の複数の更生保護法人、MAC施設、ギャンブル依存に特化した施設を訪れ、今日実施中の処遇に至った経緯、処遇の現状、当該施設の処遇を含めた有効性についての意見等の聴取も行った。 昨年、一昨年に引き続き、更生保護法人在所中の女性財産犯に、質問紙調査に加えて、自身の人生物語についてのインタビューを行い、データの追加を試みた。また、近年の犯罪者数の減少に伴い、当初想定した調査協力者数を確保できないことが明らかになったため、財産犯以外に枠を広げて調査を実施した。 このほか、調査協力者の同法人退所後の情報を入手できる見通しがなくなったことから、一般女性との比較を行うことにした。具体的には、上記インタビュー時に用いた質問紙調査の一部を一般女性に対してインターネット調査し、その同異の検討を行った。
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