本研究は,社会的養護の環境にある子どもたちの心理的な危機状態からの回復と,健全な発達支援に焦点をあて,施設における対応や支援の工夫を検討するものである。最終的には児童福祉施設における包括的な支援モデルの構築を目的としている。その目的のもと,平成28年度に行った研究の成果は以下の通りである。 1.心理教育的アプローチに関する研究 継続的に関わりのある複数の児童養護施設の協力を得て,実際に子どもたちに対して心理教育プログラムを実施し,事前・事後の効果測定を質問紙調査にて行った。また,心理教育プログラムに関わる職員のミーティングにも参加し,職員の意識に関するデータも収集した。その結果の一部を学会にて発表し,現在論文化している。 2.施設入所児の学習支援に関する研究 (1)全国の児童養護施設を対象に,施設における学習や進路指導に関する体制および実態に関する質問紙調査を平成27年度に実施し,その結果を平成28年度に分析し、平成29年度、論文にまとめて投稿準備中である。(2)児童養護施設に入所している児童に対して,個別の心理教育アセスメントから学習支援プログラムを実施した例について平成29年度に学会発表を行った。(3)児童養護施設における学習支援の実態を把握するために,施設での学習体制に関する聞き取り調査及びボランティア経験者に帯する半構造化面接を平成28年度~平成29年度にかけて行い,その結果を平成29年度に学会発表した。(4)児童養護施設に入所している児童に対して,学校生活スキルに関する質問紙調査および,学校における対人葛藤場面における葛藤解決方略に関する半構造化面接を行っている。平成29年度も追加データの収集を行った。
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