研究課題/領域番号 |
15K04164
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研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
堤 俊彦 大阪人間科学大学, 人間科学部, 教授 (20259500)
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研究分担者 |
加藤 美朗 関西福祉科学大学, 教育学部, 准教授 (40615829)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レアシンドローム / 感情的関わり / ウイリアムズ症候群 / 遺伝性疾患 |
研究実績の概要 |
本年度は、プラダウイリー症候群(PWS)に加え、ウイリアムズ症候群(WS)を持つ子どもの母親と家族の半構造化面接によるインタビュー調査を進めた。3歳から9歳のWS児4人の母親を対象にインタビューを行い、幼少期における親子の関わりについて聞き取りデータを収集した。インタビューは、カンバウェル家族面接(Cambarwell Family Interview:CFI)法を用いると共に、Five Minutes Speech Sample (FMSS)とFamily Attitude Scale (FAS)を適用し、感情表出(EE:Expressed Emotion)の評価を行った。これらを通して、精神発達に遅れをもつWS児であるが、その妖精様顔貌と外向的な特性から子ども同士や親以外の大人からも親しまれやすい特性を持つ。しかし、会話の内容は一方的で表層的であるなどコミュニケーションに困難を抱える特性が確認された。また、知的な遅れは軽度から中等度で、言語的には大きな障害を示さないため、着実に成長していく力があることもわかった。EEは、元来、統合失調症を持つ子どもの家族の感情表出の評価のために作成されたもので、必ずしも障害児を持つ親や家族には適切ではない可能性が明らかになった。そこで、WS児においては、母子の関わりについて感情的な応答を図るEA(Emotional Availability)を加えてデータを収集していく。今はまだ予備調査のデータ分析の段階にあるが、EA評価は、母子の感情的な関わりをより客観的に分析することができる可能性が示唆された。今後はこれまでのEE評価と共に、EAを加えることで、実証的な視点から、これまで十分には認識、あるいは理解されていなかったWS児の発達の現状を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の27年度は、プラダ・ウイリー症候群(PWS)を持つ子どもの母親を対象とした半構造化面接によるインタビュー調査を中心に行い、その後、28年度は、ウイリアムス症候群(WS)を持つ子どもの母親を対象とした研究へと進めた。一昨年度のPWS児の親を対象とする調査において、統合失調症の患者を対象として開発されてきたEE(Expresseed Emotion)は、適さないことが示唆されるデータが収集されたが、WS児を持つ母親へのインタビューをすすめると共に、母子の感情的な関わりをより客観的に評価できる可能性のあるEA(Emoitional Availability)を加えて調査を行なっている。最終年度となる29年度は、さらなるレアシンドロームであるスミス・マゲニス症候群を持つ子どもの母親を対象としたデータ取りを行う。
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今後の研究の推進方策 |
近年の著しい遺伝医学の発展に伴い、これまで十分には認識あるいは理解されていなかった知的障害の病因となる遺伝性疾患が、知的障害研究や特別支援教育分野で認識されるようになってきている。DSM-5および「知的障害の定義、分類、および支援体系第11版では、これら症候群の特性理解の重要性が示され、症候群ごとの行動や認知特性に関する情報が、障害特性に基づく教育や支援を展開するうえで不可欠となっている。これらのような症候群のなかには、特に、行動問題の多岐にわたる発現が特徴的とされる症候群があり、それぞれの発現傾向を把握し、予防に努める必要がある。本研究は、レアシンドローム症候群をもって生まれた子どもの中で、プラダ・ウイリー症候群(PWS)児、ウイリアムズ症候群(WS)児、及びスミス・マゲニス児に焦点をあて、子どもの母親と家族の感情的な関わりと子どもの行動の特性を明らかにすることにより、養育の場面において、母子及び家族支援につなげる基礎的なデータを収集することが目的である。今年度は、3歳から9歳のWS児4人の母親を対象に面接調査を行い、感情的な関係性の視点をあてた母子(家族)の特性を明らかにした。最終年度である29年度はは、スミス・マゲニス症候群を持つ子どもの母親へのインタビュー研究を行い、3つのレアシンドロームのデータを包括的にまとめ、遺伝子性疾患も持つ子どもの親・家族の支援プログラムにつなげるためのデータ分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は学会発表の機会が少なく、旅費の使用が減額となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、各種学会での発表(海外を含む)も計画しているため、旅費が多くなると共に、最終年度のデータ入力・処理整理などの人件費・謝金が増えると予測している。
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