研究課題/領域番号 |
15K04165
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大竹 恵子 関西学院大学, 文学部, 教授 (70405893)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 食行動 / 健康行動 / ポジティブ感情 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、健康習慣に代表されるような健康行動を支える重要な要因としてポジティブ感情を位置づけ、これまで行ってきたポジティブ感情の喚起実験に関する手法を、より現実場面に近い健康行動に適用した。具体的には、おいしさをポジティブ感情経験と位置づけ、ポジティブ感情の機能という観点から健康的な食行動の特徴やおいしいと評価するメカニズムについて検討した。 個人の主観的幸福感の高さと食刺激に対する情動的反応に関する個別実験では、主観的幸福感の高低によって日常生活での食べることに対する意識が異なっていることを調査研究から明らかにし、その知見をもとに3つの条件(食物画像呈示条件、実際の食物呈示条件、実際に食物を摂取する条件)を設定し、実験を行った。その結果、主観的幸福感が高い人は低い人に比べて、食物画像呈示時および実際の食物呈示時においてポジティブ感情が喚起され、おいしさ評価や摂取欲が高まることが明らかにされた。一方、実際に食物を摂取する条件では、主観的幸福感の高低における差はみられないことが確認された。これらの研究成果を今年度、国際誌のJournal of Happiness Studiesに論文として掲載した。 また、個人のポジティブな特性だけではなく、ポジティブ感情に関する状態を操作し、ポジティブ感情が喚起されることによって食に対する認知の広がり(食に対する考え方や感じ方、食への意識)や食物選択、さらに実際に摂取する食物の量に影響が認められるかという点についても予備的な実験を試みた。 以上、本年度は、食行動に影響することが予測されるポジティブ感情に関する個人特性および感情状態を取り上げ、食への動機づけや意識や態度といった認知、実際の食物選択や摂取量といった食行動との関連について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、先の研究実績の概要でも記載したように、主観的幸福感を個人のポジティブな感情に関する特性、おいしさをポジティブ感情のひとつと位置づけ、ポジティブ感情の機能という観点から健康的な食行動の特徴やおいしいと評価するメカニズムについて検討し、その成果についても国際誌に論文として掲載した。これらの結果から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を受けて、引き続き、食行動とポジティブ感情の関連について検討する。喫煙行動や食行動は、健康行動の中でも、とりわけ社会性を伴う行動だといえる。そこで、他者との交互作用の中でどのような現象が生じるのかという点について、人間の複雑な感情コミュニケーション過程における潜在的な意識や反応についても実験を行いたいと考えている。さらに、これまで行ってきた喫煙行動と食行動の知見を統合しながら健康的な習慣化する行動の維持や促進に、ポジティブ感情がどのような役割を果たすのかを解明したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画としてはおおむね順調に進んでいるが、当初予定していた計画として、以下の点について変更があったためである。1)研究計画および実施法の変更に伴い、当初の予定よりも謝金の支払いが少なかったこと、2)研究成果の報告として学会発表よりも論文化を進めたため、旅費の支出が少なかったこと、が未使用額が生じた理由である。この分(残額)が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の金額については、次年度(平成29年度)の研究遂行に関する必要経費として、主に旅費および人件費・謝金の使用を予定している。
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