最終年度は、これまでの研究成果を受けて、睡眠習慣に着目し、不眠問題を呈する人たちを対象に感謝介入を実施し、ポジティブ感情が睡眠習慣や心身の健康に与える効果について自己評価だけではなく、生理指標を用いた検討も行った。睡眠問題は、その内容や程度に個人差が非常に大きく、感謝介入の効果を検証するためには、より綿密な条件設定が必要だと考えられたが、感謝感情が心身の健康にポジティブな意味を有する可能性は確認できた。 本研究では研究期間全体を通して、不健康行動の習慣化防止という積極的な健康行動の維持にポジティブ感情が与える影響と役割について検討を行った。具体的には、喫煙や食、睡眠といった習慣化する健康行動をとりあげ、行動変容過程におけるポジティブ感情の意義について実験および介入を実施した。喫煙行動の変容過程として実証されてきた行動変容ステージモデルを受動喫煙行動にも適用し、ステージをより細分化して非喫煙者と喫煙者を対象に比較実験を行い、受動喫煙を含む一次予防対策には、正しい知識や主張性スキル、個人の認知として顕在意識だけではなく潜在意識を考慮する必要性が示唆された。食に関する研究では、おいしさを食におけるポジティブ感情経験と位置づけ、ポジティブ感情の機能という観点から健康的な食行動の特徴や、おいしいと評価するメカニズム、および個人差について検討を行い、その成果は国際誌に論文として掲載した。また、食べ物の新規性に関する要因をとりあげ、ポジティブ情動やおいしさといった食への意識等に及ぼす影響についても実験的に検討した。最終年度の研究成果を含めて、今後、本研究を通して得られた知見を活用し、さらなる研究実施を展開し、学会発表や論文執筆、さらに社会貢献につながる実践活動も行いたいと考えている。
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