本研究は、医療従事者が患者の死別前から家族の不適応を予測するための簡便かつ有効なアセスメントツールの開発を目的とする。本研究では、患者の死別前から前方視的に調査を実施し、医療従事者によるリスク評価と遺族自身による精神症状の評価との関連を検討した。 看護師によるリスク評価は平成30年3月末で終了し、看護師が悲嘆予測チェックリスト(10項目)および死別後支援の必要性の評価を行った家族(患者の主たる介護者)は計578名となった。また、患者の死から6か月および1年が経過した時点で、患者の家族(遺族)に対して自記式質問紙を郵送し、精神症状の評価を求めた。質問項目は気分・不安障害を測定するためのK6や複雑性悲嘆を測定するためのICG、健康関連QOLを測定するためのSF-12v2などである。遺族に対する質問紙調査は平成31年3月末で終了し、看護師によるリスク評価と遺族自身による精神症状の評価(6か月後と1年後)のすべてが揃っているデータ数は139名であった。 最終年度である本年度は、死別後1年が経過した時点のデータを用いて分析を行った。その結果、看護師による死別後支援の必要性の評価は、K6とICGおよびSF-12v2の一部で有意な関連が認められた。また、悲嘆予測チェックリストの各項目のうち「ソーシャルサポートの欠如」と「経済的問題」が、K6とICGおよびSF-12v2の一部で有意な関連が認められた。以上の結果から、看護師が患者の死別前から家族の長期的な不適応を予測しうることが示された。特に「ソーシャルサポートの欠如」と「経済的問題」は、死別後の遺族の不適応を予測する重要な要因となる可能性が示唆された。 今後はアセスメントツールを用いて不適応が予測される家族に対して、どのような支援が有効であるかを引き続き検討する必要がある。
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