地域のクリニックに通院する認知症患者の家族介護者(以下、家族)を対象とした調査にて得られた合計680名の回答のうち、主に認知症の人を在宅介護する家族について基本属性、介護状況、介護への認識のほか、精神的健康度(WHO-5-J、EPSI J-ZBI_8)、介護者の自己認識、日常経験することの回想等の関連の検討を継続した。 家族が、介護を助けてくれる人がいる、「自分は介護者」ではなく「自分は自分」、日々の介護を自分の思うようにできている、自分らしく過ごせている、と認識している場合に精神的健康度が高かった。介護負担感に限っては介護を代わってくれる人がいる場合に低く、介護期間が長い場合に高かった。また、肯定的な自己認識は家族の年齢が65歳以上、自分や配偶者の親を介護、被介護者の疾患がADやVaD、ということと関連していた。とくにADやVaDの人の家族では、「要介護者や自分の体調が良い」という状況での「要介護者にかかわること」「良いこと」という内容の過去回想が家族の精神的健康と関連していた。 さらに、14名の家族を対象に、介護の振り返りや家族にとっての介護の意味等を尋ねる面接調査を実施した。振り返り内容は大きく、家族の認知症について信じられず後悔が伴いながら何とか受容できるまでの時期、複雑な葛藤が繰り返されつつ介護におわれ余裕のない時期、介護での様々な工夫や周りに目を向けるようになった時期、という3つに分類できた。また、仕事等の家族自身の逃げ場が必要であること、生活の中のバランスの維持の必要性の他、家族の歴史の重みや自身の加齢との重なりの認識が子どもへの継承や他者への役立ちを考えることにつながること等が話された。家族から介護者の振り返りを聴いてもらえる場の確保が望まれたことからも、ある時点での介護過程の振り返りは要介護者、介護者それぞれの生き様を継続できる可能性があると考えられた。
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