今年度は、被爆者と非被爆体験者の戦争・被爆体験の内容や意味づけの様相を知ること、人生で支えられた経験、言葉、心がけを知るため、心理学にこだわらない視点から検討する研究を実施した。 被爆者の家族と同居してきた被爆2世の方に簡単なインタビューを行い、さらなる調査をお願いすることが可能となった。また、被爆地以外に居住の被爆者の方を中心に、調査日程が合わなかったこと等で延期・保留中の方が残る結果となった。 考察にあたって、被爆者の人生にわたる心の支えに関する精神論に基づく視点からの検討とした。エリクソンの提唱した「老年的超越」や、心理学以外の不条理の哲学や理論に基づく現象等と重なる点が数点みられた。しかし、一般化にあたっては、多くのデータや比較対象コホートとの調査が必要なため、本研究では慎重を要して提言は控え、継続研究として、今後、検討を行いたい。 被爆を体験していない人に、人生の重要な節目やその時の選択にまつわる考えや支えとなったものを調査した。被爆者の家族と同居した人とそうでない人、被爆都市在住の人と被爆県内在住の人に接し、①戦争体験や戦後の生活、②進学、就職、結婚、子育て等々の重要な人生の節目と意味づけ、③人生で支えられた経験、言葉、心がけを軸として、短い調査を行った。少ないデータからの簡素な調査であること、この領域の先行研究が少ないという制約はあるが、人生にわたる楽しみは年代によって、変化するものであることが示唆された。特に成人する、就職する、結婚する、子どもをもつといった節目までは、人生にわたるものとして、あまり意識しておらず、その時々の楽しみや励みとして意識されていることが示された。その後の人生においては、個人差が大きいため、さらなる検討が必要とされる。
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