研究課題/領域番号 |
15K04173
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
大上 渉 福岡大学, 人文学部, 准教授 (50551339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 銃 / 犯罪心理学 / 暴力団 / 銃撃事件 / 犯罪者プロファイリング / 発砲事件 / 多変量解析 / 捜査 |
研究実績の概要 |
一般市民が被害者となる銃撃事件は数多く発生しているにもかかわらず,物的証拠や目撃証言が乏しく,多くの事件が未解決のままとなっている。そこで,本助成研究では,銃器の発砲・射殺事件を全国規模で集積し,それをデータ・マイニング的に分析することで,銃撃事件の類型化を行うことを目的としている。もし,銃撃事件の類型を明らかにできれば,各類型の犯人特徴や犯行特徴を集約的に捉えられる。またその知見は,銃撃事件に対する攻略的捜査を可能にする。 平成29年度は, これまで入力したデータ1047件を用いて分析を行った。分析には,クロス集計分析及び多変量解析(多重対応分析やクラスター分析など)を用いた。分析の結果,日本における銃撃事件は「銃撃対象の属性」次元と「暴力団の関連性」次元が見出され,両次元の高・低などの組み合わせで,4つの類型,すなわち「暴力団関連高-対人」群,「暴力団関連低-対人」群,「暴力団関連高-対物」群,及び「暴力団関連低-対人」群に分類されることが示された。 また,類型ごとに犯人特徴や犯行特徴が異なることも明らかになった。例えば,「暴力団関連高-対人」群については,犯人は,30 代,複数犯,拳銃を用い,午後6時-午前0時に実行,屋外・移動中の被害者,被害者は対立もしくは同じ組の暴力団員に向けて発砲する,「暴力団関連低-対人」群については,犯人は,50 代や60 代以上,猟銃・散弾銃を用い,住居や路上・駐車場・車両内において,対面・接近して,被害者は家族,友人・知人・交際相手などに向けて発砲する,などである。この結果は,日本犯罪心理学会のポスター発表,日本心理学会や日本認知心理学会のシンポジウムなどで発表した。 なお,分析に平行して,データベースへの事件データ入力・コーディング作業も続けており,平成29年度末までに,未解決事件まで含めると1762件の事件情報の入力作業が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究申請時の見込み以上に銃撃事件が多く,その事件情報の入力とコーディングに想定以上の時間を要した。入力した事件は未解決事件まで含めると1762件にも上り,2018年1月末にようやく入力作業が完了した。上述のとおり,途中までの入力データを用いた暫定的な分析は行い,学会などで発表しているものの,完成したデータを用いた分析は未着手であることから,2018年2月8日付けで,日本学術振興会に対し補助事業期間延長承認申請を行い,承認されている。
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今後の研究の推進方策 |
期間を延長した今年度は分析及び論文の執筆作業を集中的に行う。行動科学的視点からみた日本における銃撃事件の構造を明らかにするために,昨年までに入力が完了した1989年から2017年までの銃撃事件データ1762件のうち,犯人が検挙された事件を用いて分析を行う。具体的には,まず多重対応分析により,銃撃事件の枠組みとなる次元を抽出する。次にサンプル事件をクラスター分析することで,日本の銃撃事件の類型化を試みる。この結果に基づいた論文を執筆し,専門誌に投稿することまでを目標にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年2月8日付けで補助事業期間延長承認申請を行い,その時点における未執行額を次年度の研究経費に充てたため次年度使用額が生じた。なお,翌年分へ繰り越した助成金については,論文執筆作業に必要な書籍購入のための「物品費」あるいは英文校閲費などの「その他」に充てることを検討している。
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