本研究は,行動科学的視点からみた,日本における銃撃事件の特徴を明らかにし,捜査支援に寄与することを目指した。日本の銃撃事件については,学術的研究が少なく,その典型的な特徴さえ明らかになっていない。そこで,本科学研究費(基盤研究C)の助成を受け,平成27年(2015年)より研究に着手した。実施する研究項目としては,①日本国内で発生した銃撃事件のデータベースの作成,②データ・マイニング的手法を用いた犯人の属性と犯行パターン抽出の2つであった。①は平成29年度末に,また②は入力する事件数が膨大であり,データベースの作成に想定以上の時間を要したことから,平成30年度まで期間を延長して完了した。 前者のデータベースは,1989年1月から2016年12月までの間に,日本国内において発生し,犯人が検挙された銃撃事件1349件(未解決事件を含めると1762件)を網羅したものである。各事件の詳細はオンライン上の新聞記事データベースから収集した。また,後者は,作成したデータベースに対し,記述統計,クロス分析,多重対応分析及び階層的クラスター分析を実施したものである。その結果,日本の銃撃事件は「銃撃対象が人か物か」と「暴力団との関連性」の2次元によって特徴づけられることが明らかになった。また,この2次元の枠組みにしたがって,日本の銃撃事件は4類型,すなわち「暴力団関連-対人」群,「暴力団関連-対物」群,「非暴力団関連-対人」群及び「非暴力団関連-対物」群に分類されることも明らかになった。 平成30年度は,およそ前半においてデータベースの統計分析を行った。後半は統計分析の結果とこれまで収集した文献を再度精査して,査読論文の執筆に着手した。
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