研究課題/領域番号 |
15K04176
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
増井 幸恵 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10415507)
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研究分担者 |
権藤 恭之 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40250196)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 老年的超越 / 後期高齢期 / 精神的健康 / ライフイベント / 心理的適応 |
研究実績の概要 |
570名の80歳代高齢者を対象として、重度な疾患の発症や親しい人の死別などのネガティブライフイベントの経験と精神的健康、および老年的超越の横断的関係を検討した。 参加者数は570人(うち女性285人:追跡率59%)であり、彼らの第1波調査参加時の平均年齢は79.9±0.83歳、平均教育年数は11.5±2.96年であった。 測定指標は、①老年的超越:日本版老年的超越質問紙改訂版(増井ら,2013)27項目を用いた。第1波調査時のスコアを用いた。②ネガティブライフイベント:高齢期の精神的健康にネガティブな影響を与えやすいライフイベントとして、a.本人の大きな病気・けが、b.家族の大きな病気・けが、c.配偶者との死別、d.自分の子どもとの死別、e.親しい友人との死別、f.親との死別、g.きょうだいとの死別、h.家族・親族・友人の介護という8種類について第2波調査時に参加者に尋ねた。③精神的健康:日本語版WHO-5を用いた。第1波調査、第2波調査、の両方で実施した。④その他の変数:年齢、教育年数、性別、手段的自立得点を用いた。 目的変数にWHO5の第1波調査および第2波の差、説明変数にネガティブライフイベントの経験数、そして調整変数を投入した重回帰分析を行った。その結果、ネガティブライフイベントを多く経験するほど、精神的健康の低下が有意に大きいことがわかった。 次に、目的変数に第1波および第2波のWHO5の得点、説明変数に各ライフイベントの経験の有無および各老年的超越下位因子の高さ、および共変量を用いた分散分析を行った。その結果、「自分の大きな病気やけが」の経験について、第1波時の一部の下位尺度(「ありがたさ・おかげの認識」、「基本的で生得的な肯定感」)が高かった者では低かった者よりも、このネガティブライフイベントの経験があっても精神的健康の低下が小さいという緩衝効果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査は計画通りに進捗している。また、横断分析の結果も、①ネガティブライフイベントの経験が精神的健康を悪化させること、②老年的超越の役割も概ね最初の仮説通りとなっていることが示されており、次年度以降の縦断研究の結果が待たれるところである。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の計画通り、平成28年度は2013年に参加した73歳高齢者(本年度は76歳)、平成29年度は2014年度に調査に参加した83歳高齢者(来年度86歳)の会場型調査を行い、縦断分析が行えるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ整理を行っていただくアルバイトの予算を多めに見積もっていたが、自分で行うことができたため、その分を使用しなくてもよくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
高齢者調査の調査員アルバイトの雇用費とする。
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