研究実績の概要 |
H29年度は後期高齢者群と前年調査に参加できなかった前期高齢者群に第3波追跡調査のリクルートを行い、前期高齢者群79人、後期高齢者群493人、計572人に対して調査を実施した。 これらのデータを用いて、①老年的超越の発達に及ぼすネガティブライフイベントである介護経験の影響の縦断的検討、②ネガティブ・ライフイベントである「家族の大きな病気」を経験した際の精神的健康の低下と低下度への老年的超越並びにその他の関連要因への検討を行った。 ①については、前期高齢者1229人の3時点にわたる老年的超越尺度の得点変化について条件付き潜在成長曲線モデルを用いて検討した。説明変数に「これまでの介護経験」と「性別」を用いた。分析の結果、性別から切片への効果(非標準化推定値=3.65, p<.001)、介護経験からの傾きへの効果(非標準化推定値=1.68, p<.001)が有意であった。今回の結果から老年的超越の縦断的変化は、初期値において女性の方が高いが、その後の変化率は男女で違いがないこと、介護を中心となって行う経験が男女とも老年的超越の成長を促進することが示された。 ②については、分析対象者は、SONIC研究の第2波調査(H25年・26年)と第3波調査(H28年)の両方の会場招待型調査に参加した前期高齢者651人であった.第2波における精神的健康リスク無し者(WHO5=13点以上、521人)のうち第2波から第3波間に「家族の大きな疾患への罹患」の経験者は117人であった.このうち第3波における非経験者の精神的健康リスク有率は8.9%,経験者のリスク有率は18.8%で有意に高かった。この117人について第3波時の精神的健康リスク発生の第2波時関連要因を検討したところ、「教育年数」と老年的超越の下位尺度の「基本的な肯定感」、「無為自然」に有意もしくは有意傾向の関連がみられた。
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