研究課題/領域番号 |
15K04179
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
池上 将永 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20322919)
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研究分担者 |
高橋 雅治 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80183060)
佐伯 大輔 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (60464591)
空間 美智子 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 准教授 (00623406)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 注意欠如・多動性障害 / 遅延割引 |
研究実績の概要 |
平成28年度ではADHD児(6歳~15歳、27年度と合わせて38名)を対象とした質問紙による遅延割引検査を実施した。その結果、28名(73%)の児童において遅延割引率(k値)の算出が可能であった。遅延割引率の平均値はこれまで報告されている定型発達児に比べて大きい傾向が見られ、ADHD児が衝動的な選択傾向を示すことが示唆された。また遅延割引率は年齢と負の相関(r= -0.53)を示し、年齢の上昇に伴って遅延割引率が低下するという定型発達児のそれと同様のパターンが認められた。一方、遅延割引率はADHD-RS等の臨床スコアとは有意な相関を示さなかった。課題の理解度や選択理由についての質問によると、児童によっては質問紙の内容(報酬の大小関係や遅延時間の長さ)の理解が十分でないケースが見受けられた。そのため、そのような児童にとっても課題内容が理解しやすいように、質問の表現等に工夫が必要であることが示唆された。 また健常な成人男女20名を被験者として、遅延割引課題遂行中の前頭前皮質活動をNIRSによって測定する実験を実施した。課題は、遅延割引質検査をコンピュータ画面上で実施できるようにし、被験者の年齢に合わせて報酬金額を変更したものを用いた。その結果、遅延割引課題遂行中では、遅延時間や金額の大小関係のみを判断する統制課題に比べて、左右前頭前皮質において有意な酸素化Hbの増加が認められた。この結果は、遅延時間を含む報酬選択の意思決定に関わって前頭前皮質の活動が生じることを示唆している。また、NIRS測定中に得られた遅延割引率(k値)は、別の遅延割引質問紙から算出されたAUC値と有意な負の相関(r=-0.49)を示した。このことは、NIRS測定中のk値がある程度の信頼性を有していることを示唆している。今後は、ADHD児を対象として、遅延割引課題遂行中のNIRS測定を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画として、ADHD児を対象として遅延割引検査を実施し、遅延割引率を指標とした衝動性検査としての可能性を探ることが予定されていた。質問紙実施の結果、ADHD児における平均的な遅延割引率は定型発達児よりも大きい(すなわち衝動的な傾向がある)ことが示され、おおむね予想されていた結果が得られた。また昨年度の予備調査の結果を受けて、報酬金額等の課題内容を改善した上で、健常な成人男女を対象としてNIRSを用いた前頭前皮質の活動計測を行った。その結果、課題の遂行に伴う前頭前皮質の有意な活動が得られるようになった。これらの結果を合わせると、ADHD児を対象とした遅延割引課題遂行中のNIRS計測の実施に対して一定の目処が立ったものと考えられる。以上から、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断された。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、ADHD児を対象とした遅延割引質問紙を引き続き実施し、データ収集に努める。また、質問紙の形式について、検査対象児が理解しやすいものに改良する予定である。これにより、検査の妥当性が高まることが期待される。加えて、検査対象児の臨床的な症状(ADHD-RS等の臨床尺度のスコア)や治療薬の服用の有無等と遅延割引率の関連性を探る研究を行う。さらにADHD児を対象としたNIRS計測実験を実施し、遅延割引率(衝動性)と前頭前皮質活動の関連性を検討する。また、反応抑制や作業記憶を調べる課題も合わせて実施し、課題間の関連や個人の特性に着目した分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度末に予定されていた研究打ち合わせが、研究協力者(北海道こども心療内科氏家医院・荒木医師)の病院勤務の都合により次年度の4月以降に延期されたため、旅費の次年度使用が生じた。 また、平成28年度中に小学校での調査実施を予定していたが、調査協力先の都合により平成29年度に実施することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究打合せは次年度に行う予定である。また、調査実施後のデータ解析のためのアルバイト謝金として、平成29年度に使用することを計画している。
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