本研究では,人が膨大な状態空間の中に潜む規則性を発見する過程およびその特徴を明らかにすることを目的として検討を進めている.具体的には,ルービックキューブをどのような状態からでも揃えることができる規則の発見を実験課題として,膨大な状態空間からの規則発見の過程について,心理実験による検討を進めている.実験では,実験参加者に前述の規則の発見を求め,その際の行動および発話を分析対象としている.これに加えて,心理実験における規則発見のプロセスのモデルベースでの検討を目指している.2016年度は,以下の2点について検討を行った.1点目は,規則発見に至るまでの参加者の全発話データを対象に,規則発見に至るプロセスにおける「観点」の推移について,分析を行った.特に,事例を「具体的」または「抽象的」に捉えている発話内容を対象に,その推移を検討した.その結果,序盤では,状態を具体的に捉えていること,一方,中盤に向かって徐々に抽象的な観点が増えていく傾向があることが明らかとなった.また,2点目として,事例空間の直接的操作が規則発見に与える影響を検討した.具体的には,課題解決中に一定割合で事例空間の直接操作を禁止した実験群と統制群との比較を行った.実験群では統制群に比して,事例の直接操作が妨げられることによって,心的な仮説空間の探索が増加し,その結果,事例空間の探索が抑制されることが期待されたが,明確な差異は認められなかった.
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