研究課題/領域番号 |
15K04186
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 光緒 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00238130)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 睡眠延長 / 睡眠不足 / 道徳的ジレンマ / 衝動性 |
研究実績の概要 |
道徳的ジレンマ課題を用いて道徳的な葛藤を生じさせたとき、睡眠延長によって道徳的判断がより的確になるかどうか、実験室実験によって検討した。 [方法]普段の睡眠時間が6時間未満で睡眠不足の愁訴のある大学生10名(男性7名、女性7名、平均19.5歳)が実験に参加した。参加者は、普段通りの睡眠をとってもらった場合と(普段条件、平均318.8分)、普段よりも睡眠時間を2時間延長した場合(延長条件、平均440.2分)の2条件に参加した。両条件ともに10:30より道徳ジレンマ課題と論理推論課題を実施した。道徳的ジレンマ課題では、Greene et al.(2001)を参考にして作成した、1)情動喚起が生じやすく、自我関与度が高く、不適切と判断しやすい「個人的ジレンマ」、2)情動喚起が生じやすいが、自我関与度が低く、適切と判断しやすい「非個人的ジレンマ」、および、3)情動喚起が生じにくい「非道徳ジレンマ」に関する文章、各10問ずつ計30問に対して、「適切」ないし「不適切」と判断してもらった。 [結果と考察]課題に対して衝動的に判断した者と熟考して判断した者では反応に差がみられたため、熟慮性-衝動性(滝聞・坂元,1991)で参加者を分けて検討したところ、熟考群では睡眠時間の違いによる課題成績の差は見られなかったが、衝動群では、睡眠時間を延長した方が論理推論課題の成績が高く、個人的ジレンマに対する反応時間が速かった。夜間睡眠は内側前前頭皮質の機能を回復させる効果があることが知られている(Walker et al,2009)。本研究の結果は、普段、睡眠時間が不足している者が十分な睡眠をとることによって、社会的・理性的な判断を要する適切な行動が促進されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目および2年目については、予定通り実験が終了し、いずれも睡眠延長による効果を実証することができた。3年目(最終年度)の研究(フィールド実験)については、研究の進行が遅れることのないよう、1年目からすでに準備を始めたため、最終年度を待たずに、すでに200名以上のデータが収集できている。
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今後の研究の推進方策 |
1年目および2年目に収集した200名以上のフィールド実験のデータに対して、3年目(最終年度)に収集したデータを追加して分析し、最終年度としてのとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を英語論文として発表するため、英文校正料を申請していたが、本年度内に英語論文を出すことができなかったため、英文校正料を次年度に繰り越すこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
英語論文を出すための英文校正料として使用する。
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