本研究は、情動調整機能のうち気分改善効果と情動記憶の強化の両側面に着目し、それぞれが関与する睡眠中の神経基盤について心理生理学的検討を行った。検討の結果、就床前に感情経験をした際の翌朝の気分について、ノンレム短縮群に比べてレム短縮群でネガティブ気分が有意に増大し、このネガティブ気分はレム睡眠の持続時間と有意な負の相関関係を示した。一方、就床前に記銘した情動価の伴う単語の再生率は、睡眠段階3+4の持続時間とレム密度とそれぞれ有意な正の相関関係を示した。以上の結果より、レム睡眠は就床前の気分の影響を受け気分の改善効果に関与し、ノンレム睡眠は睡眠段階3+4が情動記憶の強化に関与する可能性が示された。
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