本研究は多くの研究がある空間的注意に加えて時間に対する注意を心理物理および機能画像、神経薬理学の手法を用いて解明することを目的としている。倫理委員会の承認を得て実験を行っている。これまで10名の健常被験者、5名のパーキンソン病患者、7名の脳腫瘍患者を対象とした実験を終了した。特に脳腫瘍患者については術前後に実験を行っている。 中間解析の結果、心理物理実験からは時間を弁別する際は空間性の注意が干渉し、空間に関する弁別の際にも時間に対する注意が干渉することが示された。これは認知処理に際して時間と空間に対する注意が独立に層さされるが注意のリソースが限られることから干渉が生まれることを示唆する。脳腫瘍患者の実験から頭頂葉損傷により空間性注意と時間性注意の間に独立した障害が出現することが示された。 また、機能的MRIでは空間性注意課題の際には両側頭頂葉の活動が、時間性注意課題の際には小脳の活動が上昇することが示された。 Donepezilの作用による弁別成績の変化や脳活動の変化については現時点で有意な結果はみられていない。今後、脳腫瘍例をさらに3例、パーキンソン病症例を10例追加して実験を行い、研究をまとめる予定である。
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